今回は私がミャンマーで撮ってきた動画を見てもらいながら、ミャンマーに関する連載を再開する。
文章での説明だけよりもイメージが湧くだろう。ミャンマー移動中に自ら撮ったもので、貴重な映像もあると思う。
※本ページ掲載の動画は、伊藤洋一氏がYouTube動画にアップロードしたものです。映像の著作権は伊藤洋一氏に属します。
映像で見るミャンマー
・ヤンゴンの街並み(約6分52秒)
街を走る多くの車やバス、托鉢(たくはつ)後に裸足で歩く僧侶、移動する人々、雑然と並ぶ商店などが写っている。ヤンゴンはミャンマーで一番の大都会であり、最近まで首都だった。車の9割は中古の日本車だ。バスの横には、「東急」だとか「西武」だとか残ったままだ。「日本のバスは使用後にこんなところで第二の人生を送っているのか」と思う。
・黄金の三角地帯(約3分44秒)
ミャンマー、タイ、ラオスとの国境地帯にある「黄金の三角地帯」、ミャンマーサイドの街の昼過ぎの風景である。行き交う車、街の様子、人々がどう移動しているかが分かる。横断歩道はほとんどないので、みんな右を見て、左を見て急いで渡る。ミャンマーはバイク禁止だが、地方にいくとバイクが多い。安いので中国製が多く、「一日で壊れる」ともいわれているらしい。
・ヤンゴンの壮大なパゴダ(約4分02秒)
ミャンマーは「パゴダ(仏塔)の国」だ。尾道にお寺が多いのと同様に、ヤンゴンの人々はお金ができると来世のためにパゴダを建てる。だから今でもミャンマーのパゴダは増え続けている。ここはヤンゴンで一番、外国人観光客が多い場所だ。
インレー湖:湖上の漁業と農業(約3分54秒)
ミャンマーの有力な観光地の一つにインレー湖がある。足で小舟を操る民族がいることで有名だ。最近は高地の涼しさを利用して、大きな観光地開発が進んでいる。我々が泊まったホテルも湖畔の壮大なホテルだった。水やお湯には不安材料があるが、欧州などから大勢の観光客が来ていた。すでにインレー湖は大きな国際的観光地になっていた。
パゴダの上からのバガンの夕陽(約38秒)
ミャンマー中部の都市ガバンは、パゴダが壮大かつ数多いことで有名であり、“ミャンマーの京都”のような場所だ。そのパゴダに登って見る、沈む夕陽がとてつもなく美しいと聞いたので行ってみた。すさまじい数の国際的観光客が集合していたが、夕陽は確かに美しかった。
すでに国際化
少しでもミャンマーの実情が伝わっただろうか。「百聞は一見にしかず」の“一見”は自分の目で見ることだが、大半の日本人はまだミャンマーに行ってないし、映像も限られていることから、私が撮影した映像を共有してみた。
前回のミャンマーに関するコラムの最後は「世界が注目する国に」だったが、実際に世界各国から大勢の人が訪れていることが分かってもらえたと思う。バガンには日本の企業が出資したホテルもあり、そこには5~6人の日本人研修生も来ていた。すでにミャンマーは国際化しているのである。世界から注目され始めたばかりだというのに、そのスピードには驚きだ。
日本とミャンマーの関係も深まっている。「日本人は来るには来るが、意思決定が遅い」と言われていることは紹介しておかねばならないと思うが、年初に麻生副総理兼財務相がミャンマーで500億円の円借款を約束したと思ったら、2月には経団連の米倉会長が同国商工会議所連盟と相互協力に関する覚書を締結した。日本に帰ってきてから経済界の人々と話をすると、「我々はすでに(ミャンマー)進出を決定しました」とか「今、真剣に検討中です」という方が多かったことを付け加えておく。
強く思ったのは、「ミャンマーにはものすごい成長余地がある」ということだ。自国で生産できるもの(特に農産物)は多いし、天然ガスもある。貿易収支は黒字基調だ。人々の手先が器用で、ガイドをしてくれたウィーさんは裁縫も上手かった。何を作らせても良さそうだ。ちょっとしたバイクの修理など、自分でしてしまう。それなのに「これといった産業がない」のだから、お金が入って場を設け、育てればすごい。その一方で整えなければならないインフラは山ほどある。
何よりも中国が狙うほど、天然ガスなどの資源も豊富だ。今でも貿易収支は黒字なのだから、これで産業が入って縫製などをきっかけに大規模な工業化が進めば、ミャンマーは大きく変容する。いや、発展は確実だ。そういう意味では、米国や日本や欧州がこの国に熱い視線を送るのは当然だし、それだけの可能性があると思う。ミャンマーは「実に可能性にあふれた国」である。(続)
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