1. 先駆者たちの大地

先駆者たちの大地

帝人株式会社 大屋晋三

1958年~ 夢の清算から世界企業への出発

ポリエステル繊維に目をつけた大屋の読みは当たっていた。テトロンの成功後、大屋はさまざまな事業に着手し、著しい多角化を開始した。しかし、それらは石油開発、牧畜、レストランなど、いずれも帝人の化学工業としての資産を生かすものではなく、言ってみれば場当たり的な思いつきを次々に実行に移しているようなものだった。結局、医薬事業以外はことごとく失敗し、第2、第3のテトロンが生まれることはなかった。帝人は未曾有の赤字を計上し凋落の一途を辿っていったが、大屋が80年に他界するまで多角化から手を引くことはなく、大屋亡きあと80年代末までに撤退した事業は50近くにも達していた。その後の帝人は縮小均衡路線を余儀なくされ、97年に就任した現社長の安居祥策の代になってようやく敗戦処理も終わり、提携とグローバル化を軸にした積極経営を開始したのである。

現在の帝人は、自動車の金属部分以外のほとんどの部品を製造し、ほかにもCDやDVD、携帯電話やパソコンの機械部品など、総合化学素材メーカーとしてさまざまな素材を製造しているが、売上高でその中心となっているのはやはり繊維であり、その中核をなしているのは今でもテトロンである。
大屋晋三というカリスマは、功罪ともに大きな足跡を帝人に残した。思えば、これほど多くの経験を積んだ大企業も稀ではないだろうか。2度の成功と2度の失敗を体験し、ようやく力を取り戻したこの巨大企業の新たな目標として、現社長の安居はグローバル市場で勝ち残る世界企業への道を選んだ。大屋亡きあとの新生帝人が、いよいよ動き始める。

総合化学素材メーカー
総合化学素材メーカー2
総合化学素材メーカー3

総合化学素材メーカーとなった帝人

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IRマガジン2001年3-4月号 Vol.48 野村インベスター・リレーションズ

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