事務機業界として初のデミング賞獲得を果たした
感光紙一枚の技術から始まったリコーは、画像処理技術をキーとして進化し、現在はデジタル・ネットワークによるソリューションを核に事業を展開している。リコーの歴史を牽引してきたものは独特の先見性であることは間違いないが、それは商品開発だけにとどまるものではなかった。
その最も顕著な例が、75年のデミング賞の受賞である。71年11月、当時の舘林社長は約270人の幹部社員を前にデミング賞への挑戦を宣言し、その日から、全社的な品質管理(TQC)運動がスタートした。当時開発段階にあったリコピーDT1200を新機種開発の事例に取り上げ、4年間のTQC運動が推進された結果、事務機業界では初めてのデミング賞受賞につながった。その10年前に無配という危機を招いた企業体質は、デミング賞への挑戦によって一変し、見違えるように強化された。
そして、現在、リコーの先見性を最も示しているのが環境経営への取り組みである。企業活動のあらゆる側面で地球環境への負荷を削減しながら、経済的価値を追求していくことが環境経営である。リコーはその活動と製品を通して、省資源、リサイクル、汚染予防などを推進するとともに、世界中で原生林の保全と修復活動を行い、世界でもトップクラスの環境経営を展開している。顧客への貢献によって経済活動を行うことが企業活動の根幹とするならば、環境に貢献することで経済的価値を追求する環境経営は、最も先進的な企業活動の形態といえるだろう。先見性とは、未来に必要なものは何かを理解し、先んじて実践する力である。未来型企業のひとつのモデルケースを、私たちはリコーに見ることができるかもしれない。