1953年4月7日、浜松飛行場の滑走路を一機の小型飛行機が滑り出していった。しだいにスピードを上げ、わずか65馬力の小さなエンジンは悲鳴をあげるが、一向に浮き上がろうとしない。滑走路がしだいに短くなっていく。関係者の間に緊張が走り始めたその瞬間、機体はふわりと浮き上がった。戦後初の国産飛行機が離陸した瞬間であった。この飛行機を製作したのは飛行機メーカーではない。戦後、国産機の製造が解禁となってから最初に飛行機を完成させたのは、現在オフィス家具のトップメーカーとして知られる、株式会社岡村製作所(以下、オカムラ)である。この事実が、オカムラという企業の生命力を解き明かす大きな鍵であった。
戦後初の国産飛行機N-52(1953年4月7日)