1. 先駆者たちの大地

先駆者たちの大地

イビデン株式会社 初代社長 立川勇次郎

1971~2000年 電子産業への脱皮

第2次世界大戦中に電気事業が国家管理となり、創業以来の電力供給事業を廃止して、電気化学工業による素材メーカーとして再出発を図った揖斐川電気工業。やがて高度成長期を迎えて事業は順調に進展してきたが、大正時代からの古い製品には刻々と寿命が近づいていた。石油化学工業の発展で塩化ビニールはカーバイドよりもコストの安いエチレンで生産されるようになり、そこにOPEC(石油輸出国機構)の石油値上げによる電気料金の高騰が追い討ちをかけた。もともと揖斐川電気工業は、電力事業の余剰電力による電気炉事業を中心に発展してきたのだが、電力消費量の多い電気炉事業には、電気コストの高騰が大きな打撃となったのである。新たな事業として成型品原料としてのメラミンの伸長が期待されたが、やはり石油化学系のメラミン生産方法が実用化されコスト面で対抗することができず、71年、メラミンの生産にピリオドを打った。揖斐川電気工業に再び大きな転換期が訪れようとしていた。

実際、73年のオイルショックが電力多消費型の電気炉事業に大きな打撃を与えた。揖斐川電気工業は事業体質の改善を目指して、今後強力に育成すべき事業分野の絞り込みを開始する。建材・カーボン分野で培った技術を活用できるプリント配線基板、電気炉技術を応用したセラミックファイバー、カーボン関連の特殊炭素製品の3製品が、それである。
74年に初めてのプリント配線基板の工場が立ち上がり、新事業がスタートした。立石電機(現在のオムロン(株))からの受注を皮切りに、タイトーのインベーダーゲーム用基板などを経てデジタル時計の基板で事業は大きく飛躍した。その後パソコンや携帯電話などの基板でさらに事業は拡大し、96年には、半導体のプラスチックパッケージ基板がMPU最大手のインテル社の目にとまり供給契約を結ぶに至った。セラミックファイバーでは成型加工に力を注ぎ、自動車の触媒保持・排気系シール材として自動車関連の市場に進出を図った。また炭化ケイ素の用途として、ディーゼル車の排ガスに含まれる煤をほぼ100%捕集する黒煙除去フィルター(DPF)を開発したが、これは2000年からフランスのプジョー社に正式採用され、世界で初めてディーゼル車に搭載されている。こうしてオイルショック以降の変革は成功した。 現在、「イビデン」の名は世界中で知られるものとなり、特に電子関連の分野では絶大なネームバリューを持つに至っている。

超高多層プリント配線基板

超高多層プリント配線基板

高機能パッケージ基板

高機能パッケージ基板

自動車用排気系部材

自動車用排気系部材

プジョーのディーゼル車に採用された黒煙除去フィルター(DPF)

プジョーのディーゼル車に採用された黒煙除去フィルター(DPF)

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IRマガジン2003年秋号 Vol.63 野村インベスター・リレーションズ

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