「味の素」の商品化に際し、味の素は、当初から朝鮮、中国、台湾へ販路を求めていた。東南アジアへの輸出も戦前から行われ、アメリカでは、ハインツの缶詰に採用され、広く愛されていた。その後、1961年のタイを皮切りに海外現地生産を開始、現在では東南アジアを中心に生産拠点は世界15カ国を数える。また、「味の素」以外でも加工食品や飲料、冷凍食品・ファイン分野でも広範に事業を展開、さらにアミノ酸の利用技術によって、アミノ酸そのものが持つ作用や機能を発見し、医薬用アミノ酸・医薬品をはじめ甘味料「アスパルテーム」、機能性栄養食品「アミノバイタル」など、健康栄養面の製品で好評を博している。このほかアミノ酸・リジンは世界各国で優秀な飼料添加物として採用されている。2002年1月現在、味の素の海外ネットワークは、連結子会社、持分法適用会社69社を数え日本を含む世界22の国と地域にわたっている。
1999年(創業90周年)味の素は「あしたのもと」という新スローガンを打ち出し、新生味の素として歩み始めた。グループの総合力を強化して、めざすは「食品・アミノ酸系の日本から出発した世界企業」である。この言葉には味の素の歴史と未来が集約されている。帝国大学の研究室での出会いから出発し、たったひとつの調味料から事業分野を拡大して世界企業となった味の素の歴史は、未知への挑戦の連続だった。もちろん、この起業家スピリットは現在でも脈々と流れ続けている。今後、どのような新展開をみせてくれるのか、21世紀、味の素への期待は大きい。