「流動性のわな」というのは民間金融機関などに資金が大量に余り、金利が十分に下がっている状況になっているにもかかわらず、おカネが民間金融機関から貸し出しとして企業や個人の家計など民間部門に流れ込んで、設備や在庫(商品)、株式、不動産などの投資や消費が増える状況にならないことをいいます。
では、金利が下がっているのにどうして設備投資や消費が増えないのでしょうか。
それはデフレつまり物価の下落が進んでいるためです。
金利が下がっていても、モノの価格も下がってしまうために、おカネを借りて、設備投資をして新しいビジネスを起こしたり、値上がりを期待して株式や不動産、商品を購入するよりも、何もせず、現金を保有しているほうが安全という心理が働くためです。たとえば、企業や個人がおカネを実際に借りる金利である名目金利が1%であっても、物価が2%下落してしまえば、実質的な負担となる実質金利は3%になります。現在の日本はデフレのために、実質的には低金利のメリットを感じないということです。
これまで日銀は景気を刺激するために金利を引き下げ、現在はほぼゼロ金利に近い状況になっています。
しかし、「流動性のわな」に陥っているため、金融政策の効果が表れていないのです。逆に、ゼロ金利では名目金利をもうこれ以上、下げられないだけに、金融政策はほぼ手詰まりの状態にあるといえます。
このため、エコノミストの中には、日銀がただ通貨(おカネ)を供給するだけではなく、物価上昇率の目標を定めることによって、企業や消費者にインフレを期待する心理を生んでデフレを止めて、緩やかなインフレの状態にすべきという意見も出ています。