1. いま聞きたいQ&A
Q

「ゼロ金利解除」って何ですか?

「ゼロ金利解除」とは、日銀が0%に抑えていた短期市場金利(無担保コール翌日物金利)を0.25%に引き上げたことです(2006年7月14日の日銀・政策委員会・金融政策決定会合にて)。「ゼロ金利政策」を解除したので、「解除」と言います。同時に、翌日物金利の事実上の上限となる「補完貸付制度の基準金利」(公定歩合)も年0.1%から0.4%に引き上げました。
金融市場で政策金利が0%を脱し、金利機能が復活するのは5年4カ月ぶりです。景気が緩やかに拡大し、物価が下がり続けるデフレに逆戻りする恐れはないと判断し、実施されました。

無担保コール翌日物金利が上がると、1年や5年、10年など期間の長い市場金利や銀行の預金金利、住宅ローン金利などが上昇します。日銀は金融政策で翌日物金利を上げ下げし、経済活動にかかわる様々な金利に影響を与え、景気の過熱を抑えたり、回復を支援したりしています。

長い間低金利に慣れてきた私たちも金利復活の時代に備えなければなりません。

大手銀行は普通預金の金利をこれまでの年0.001%から年0.1%に引き上げます。100万円を預けている場合、1年間で利息(税引き前)は10円しかありませんでしたが、これが1000円に増えます。
個人向け国債にも市場金利の上昇が直接波及します。10年満期の変動金利型は発行時の利率が「10年物国債入札の金利マイナス0.8%」という計算式で決まり、半年ごとに見直されます。7月発行分は1.1%と、預金金利に比べて高くなっています。今後の市場金利に応じてさらに上がる可能性もあります。

資金運用の金利だけでなく、忘れてはいけないのが借入金利です。住宅ローン金利は2006年に入り、ゼロ金利解除を先取りして長期金利に連動して、すでに何回か引き上げられています。固定金利型の場合、銀行は期間ごとの市場金利をもとに、原則として毎月水準を見直しています。
変動金利型の住宅ローン金利は企業向け融資の基準金利(短期プライムレート)に1%を上乗せして決める例が多くなっています。短期プライムレートは短期の市場金利を基準に銀行が適宜決めます。短期金利が長らく超低水準にあったため、多くの銀行で1.375%に据え置かれたままでした。変動型の住宅ローン金利も大手行の場合で2.375%でしたが、短期金利が本格的に上昇し始めれば、それに連れて上がっていくでしょう。

ゼロ金利の解除は企業の借入金利にも影響します。企業向けの長期の貸出金利では、みずほコーポレート銀行が大企業向け融資の指標となる長期プライムレート(最優遇貸出金利)を0.2%引き上げ、年2.65%にしました。
企業の利払い余力を示す「インタレスト・カバレッジ」(=事業利益(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料)をみると、上位にはキヤノン、アステラス製薬、NTTドコモ、三菱商事、大日本印刷が並び(2006年7月15日付日本経済新聞朝刊より)、これら企業は金利上昇への耐久力が強いことを示しています。

ゼロ金利解除は、プラスの面もマイナスの面も持ち合わせています。ご自身の環境をきっちり見据えて、冷静に分析しましょう。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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