お金の歴史雑学コラム

17 鳳凰、龍、ネズミ、イノシシ……お札に登場する動物たち

明治の人々に愛された“イノシシのお札”

1885年(明治18年)に初めて発行された日本銀行券である「大黒札」には、商売の神様とされる大黒天の足下に、ネズミの絵が描かれています。(「日本で最初のお札とは?」を参照)

1890(明治23)年に発行された「改造十円券」には表面に8匹、1899(明治32)年に発行された「甲十円券」には裏面の中央に大きく1匹のイノシシが描かれていました。それぞれの紙幣は「表猪(おもていのしし)」「裏猪(うらいのしし)」という呼び名で呼ばれ、人々に親しまれていました。

ちなみにイノシシの絵が用いられた背景には、これらのお札に肖像画として登場する「和気清麻呂(わけのきよまろ)」にまつわる伝説があります。平安時代初期に残された歴史書『続日本紀(しょくにほんぎ)』によると、皇位継承を狙っていた弓削道鏡という人物の企てを和気清麻呂が阻止したため、道鏡がこれに腹を立て、清麻呂を暗殺しようとしました。するとそこに300匹ものイノシシが現れて、彼を守ったというのです(イノシシにまつわる伝説はほかにも諸説あります)。その伝説にちなんで、和気清麻呂の肖像とともにイノシシの絵柄が紙幣に用いられたというわけです。

その後現在まで、日本のお札には計8種類の動物が登場しています(ネズミ、イノシシ、馬、ニワトリ、鳩、ライオン、キジ、鶴)。

お札に描かれた動物たち

お札に描かれた動物たち
(出所:日本銀行)

※参考文献
『お金の話あれこれ』(日本銀行)
『これだけは知っておきたい(14) お金の大常識』(ポプラ社)
『紙幣肖像の歴史』(東京美術)
『詳説 世界史研究』(山川出版社)
『お札の文化史』(NTT出版)