金融そもそも講座

「もしバイデン」とその後

第350回 メインビジュアル

米国の大統領選挙に関するの続きを早めに書こうと思う。今年後半のマーケットの最大の関心事の一つなので。前回は「もしトラ」が徐々に「多分トラ」「ほぼトラ」という見方に変わりつつある中で書いた。その見方をマーケットは足早に織り込みつつある。

だとするとマーケットが「トランプのカムバック」を織り込み終えた頃に、逆に「予想外のバイデン再選」となるケースも考えておかねばならない。選挙は水物で、「もしバイ」というわけだ。マーケットはいつでも、織り込んだ予測と異なる結果が出た時には衝撃をもって反応する。

一般選挙での判断が下されるのは11月5日(11月の第1月曜日の翌日の火曜日)だ。「ほぼトランプで決まり」と思われている中で、予想外に「やっぱりバイデンの方が安心」という判断を米国国民が下したらどうなるか。マーケットはやはり動揺し、多分その当初反応(knee-jerk reaction)は下げだ。

というのは、トランプ元大統領の4年間(2017年1月20日から)は、マーケットの記憶としては基本「上げ」で、コロナ勃発の2020年春以外は非常に堅調だった。その記憶は今でもマーケットにある。歴史的にも共和党の大統領の下では米株には上昇傾向が見られた。バイデン再選では「まだ4年も高齢の大統領が続くのか」ということで、それ自体が弱材料と判断されるかもしれない。

もっとも「政策の継続性」は担保される訳で、その点ではマーケットは選挙結果をすぐに織り込み終えるだろう。目は他に向く。しかし「もしバイ」だと、来年から4年間の米国は新たな問題を抱える。再選大統領の高齢ぶりが進むが故に、「彼の後釜は大統領に適任?」という問題を常に考えておかねばならない。これはかなりややこしい問題だ。

閑話休題

ところで本題に入る前に、「なんでも自分でやってみた方が良い文章が書ける」という信念のもと、筆者は2月の中旬に新型NISAの枠設定をした。同NISAに関しては一昨年からこのコーナーで時々取り上げており、2024年開始の折には自分でも口座開設をと思っていた。しかしなかなか忙しくて着手できずに、手続きを始められたのは今年に入ってからだった。

いくつか気がついたことがあるので、「まだ」という人の為に少し書いておく。まず思ったのは、口座開設に案外時間がかかるという点。国民一人に一つしか許さない口座なので、各種確認作業があるのだと思う。開設申し込みが1月中旬。それから開設終了に約1カ月かかった。

第2は、窓口に足を運ぶことなく「オンラインで完了できる」ということ。ずっと前から付き合いのある証券会社アプリの「NISA口座開設」をクリックして申し込み、必要書類(本人確認書類)を写真撮影・送信し、そして手続き完了を待つという手順。開設が完了すると、株式取引・残高の各項目に「NISA」が加わる。また積立口座には投信を選んだので、それには新たに関連アプリを一つ入れた。

やってみて「積立口座」は「毎月10万円がマックス」と改めて認識。「10万円×12カ月」が120万円だと。NISAの一年は元旦スタートなので3月1日からの積立開始を選択した私は、今年はマックスでも100万円が限度。どうせ始めるつもりなら、早い方が良い。「10万円分」とかいう買い方が出来るのは投信なので、積立口座には考え方の合致する投信を組み込もうかなと思っている。

成長投資枠の方は好きな銘柄を入れる予定。年間上限が240万円なので、うまく組み込める株数の銘柄が必要。端株は避けたい。せっかく始まった制度。試してみたい。

大丈夫かバイデン?

本題の米国の大統領選挙。現職のバイデン大統領にはいくつもの不安材料が出てきている。その一つは彼の認知能力が大丈夫かという問題。現状でもそうなのだ。

直近で筆者が気になったのは、自宅などから副大統領(オバマ政権下)だった当時の機密文書が見つかった問題。ハー特別検察官はバイデン氏を刑事訴追しないと判断した。その理由は「同氏の記憶が著しく限られており、自分の息子が死亡したのがいつかも明確に覚えていない」というもの。米国の大統領を「a well-meaning, elderly man with a poor memory」(貧弱な記憶力の善意の老人)とまで表現した。

バイデン大統領は急ぎ記者会見を開き、「私の記憶力は正常だ」と主張した。しかしその記者会見で中東情勢について触れ、「エジプトのシシ大統領」と言うべきところを「メキシコのシシ大統領」と言い間違えた。ハー特別検察官は共和党員で、彼が使った刺激的“言葉”には党派色も指摘できる。また米大統領が年齢や記憶力のレベルだけで決まることもない。しかし民主党の内部からも疑念が出ている。

バイデン再選となったら何が起きるか。第1に非常に弱々しい大統領になる。今でも見た目は歩き方すら相当ぎこちない。多分あまり記者会見も開かなくなる。超大国である米国の大統領が放つ一言一言は重い。頻繁に会見に出すことは危険だ。世界の政治・外交はますます「弱い米国」を前提として動き出す危険性がある。

イスラエルは今でもバイデン政権の意向を無視した対ガザ政策を推進している。世界的にもバイデン政権は足元を見られている。アフガニスタンでの大失態を見てプーチンがウクライナ侵攻を決めたと言われるようなことが、中国と台湾の間で起きるかもしれない。

カマラ・ハリスとは

「もしバイデン再選」となって次の4年が始まった時には、「彼に何かあったら」という問題が常につきまとう。特定機能不全や突然の死去など。米国男性の平均寿命は2021年時点で73.5才だ。不慮の事態の確率が低いとは言えない。

その場合、現在副大統領のカマラ・ハリスが女性初、アジア系初の米国大統領となる。今回の文章では「彼女がどういう大統領になるか」について、イントロ的に紹介しておこうと思う。彼女は1964年10月20日生まれ。バイデン氏より20才以上若い。仮に大統領に昇格すれば、女性として、また黒人・アジア系で初の米大統領となる。ジャマイカ系の父とインド系の母を持つ移民2世で、カリフォルニア州検察官、同州司法長官、同州選出の上院議員を歴任した。

州司法長官や上院議員時代の行動や発言からすると、彼女の政治家としての関心事や考え方の柱は以下のようものになると思われる。グーグルのGeminiやオープンAIのChatGPTで調べ、私としても検証した結果、以下のような傾向が見られた。

  • 1.企業規制の厳格化を志向し、労働者重視の政策を採用=大企業による独禁法違反や消費者への不当行為に厳しく対処。企業による労働搾取や不当解雇に対して厳しい姿勢
  • 2.中小企業には支援の手=経済成長の重要な担い手は中小企業と認識。融資制度の拡充や税制優遇などの支援策を発動し、経済政策として総体的に「所得格差の是正」を前面に
  • 3.医療制度改革と環境問題への取り組み=国民皆保険制度の導入を支持している。その観点から、医療費負担の軽減や医療サービスへのアクセス改善などの推進。気候変動問題に熱心に取り組み、クリーンエネルギーへの投資拡大や環境規制強化などを提唱

むろん大統領に実際になれば、政策も変容を余儀なくされる。しかし経歴や基本的な考え方を知るのは重要な事だ。バイデン、トランプ両氏と似ているところも異なっているところもあり、どの業種がどのような影響を被るかもある程度予想できる。

同じこと(調べる必要性)はトランプ大統領の副大統領候補についても言える。トランプ氏も高齢だからだ。実は「共和党」「民主党」と区分けされていても、実際にはバイデン大統領も貿易・経済政策の基本は「America First」だ。日本製鉄のUSスチール買収への態度にその本質が出ている。

トランプ氏は大声で反対を唱えているが、USW(全米鉄鋼労働組合)によるとバイデン大統領もこの買収に反対を唱えるUSWに「組合の姿勢を後押しする」と伝えてきたという。カマラ氏はもっと労働組合寄りかもしれない。

いつもそうなのだが、「本質・正体はどこに」と考えながら、バイデンとその副大統領のハリス氏、返り咲くかもしれないトランプ氏とその副大統領候補も見つめたい。

ご注意:本コラムは、上記掲載日から2週間程度前に伊藤洋一氏が執筆されたものです。
閲覧される時期によっては、現状に即さないことも予想されます。また、内容には仮定に基づいた記述も含まれます。ご了承ください。