どのような世界にお金を投じているか
たとえば株式投資を、「投機」の代表とされる宝クジや競馬、パチンコなどのギャンブルと比較してみましょう。
株式投資では、株価が下落して損失を被ることはあっても、最初に投じたお金がゼロになることは、企業の倒産など一部の例外を除いてほとんどありません。騰落率が「%」で表されることからもわかるように、株式投資というのは基本的に「±○%」というかたちで結果が出る世界であり、マイナスの場合でも途中で売却して損失を限定するチャンスが与えられています。
ところがギャンブルは、結果が「当たりか外れ」だけの世界であり、外れれば賭け金は事実上、ゼロになってしまいます。
もうひとつの大きな違いは、勝者の数や得る金額が限られているかという点です。株式投資では極端な話、ある企業が成長して株価が上がり続ければ、その企業に投資したすべての投資家が勝者になれるという可能性もあります。株価には上限がないので、得る金額にも上限がないことになります。
一方のギャンブルは、ゼロになった敗者の賭け金を、勝者のあいだで配分する仕組みになっています。勝者の数が限られてくるうえに、儲かる金額もいわば敗者の投じた金額に依存することとなります。
値動きに賭けるか、企業価値に賭けるか
同じ株式投資でも、場合によっては「投機的」とみなされることもあります。
今年(2007年)2月末に発生した世界同時株安は、中国の上海市場における株価急落がきっかけとなりました。上海市場では2006年の1年間で株価が2倍以上に急騰。企業の情報公開が未整備な部分もあったうえに、業績が芳しくない企業の株価でも上昇していたため、バブルではないかという懸念も出ていました。そこへ中国政府による市場規制強化のうわさが流れ、利益の確定を焦った投資家の売りが集中して、株価急落を招いたと言われています。
上海市場の参加者の大半は、まだ投資経験が浅く未成熟な中国の個人投資家です。今回の出来事で明らかになったのは、彼らが株式を買う際にも売る際にも、相場の動向(値動き)を見ながら判断した部分が大きいということです。こうしたお金の使い方は投資というよりも投機としての性格が強く、短期売買になりやすいという特徴もあります。
本来的な意味での株式投資とは、企業の業績や競争力、ビジネスモデルなどを評価しながら、その将来的な収益性(企業価値)にお金を賭けることを言います。ただし、企業価値への投資には綿密な調査と長い時間が必要となるため、一般個人にはなかなか難しいのが実状です。すなわちそのような調査をせずに、値動きだけから判断する株式投資は、投機的になりやすい傾向があります。
いずれにしても大切なのは、自分がどのような仕組みの世界にお金を投じているか、そして自分がどのような対象にお金を投じているかを知っておくことでしょう。投資と投機のどちらが正しく、どちらが間違いかということはありません。自分の行為が意味するところと、そのリスクを把握しておけば、その結果への理解も深まるはずです。