1. いま聞きたいQ&A
Q

高配当株への投資が、いま注目を集めているのはなぜですか?

中長期で利息収入を積み上げる、いわば債券型の株式投資

私たち個人投資家にとって、配当利回りが高い「高配当株」に投資する意味は、大きく分けて2つあると考えられます。

ひとつは「利息収入」から見た意味合いです。配当とは私たちが株式を保有しているだけで定期的に手に入る収益であり、国債でいうところの金利(利息)に相当するものです。今年(2012年)5月29日現在、東証1部上場全銘柄における予想配当利回りの平均値(過重平均)は2.61%。新発10年物国債利回り(0.850%)との差は、2000年以降で最大レベルに開いており、配当利回りの相対的な高さが際立っています。

将来的に減配や無配に転落するリスクが小さい銘柄の目安として、財務の健全性や利益水準の安定性という観点から、時価総額の大きさを挙げることができます。例えば時価総額1兆円以上の企業に絞っても、配当利回りが4~5%台と、市場の平均値よりかなり高い銘柄が結構あります

配当利回りの高さは、企業の成長性が低下していることの裏返しという見方もあります。利益を成長分野へ投資して企業価値を高め、株価の上昇によって株主に報いてきた企業が、成長期待の低下にともない、配当という利益還元によって株主に報いる方向へと転換を図る――。海外では一般的なこうした例が、最近では日本企業でも目立つようになってきました。

株価上昇への期待が薄まる一方で、優良企業の株式を中長期で保有しながら、配当という利息収入を安定的に積み上げていくという、いわば債券型の株式投資が可能になってきたことは注目に値します。世界的に国債利回りが低下するなか、外債運用で十分な利息収入を確保できなくなった投資家が、高配当株への投資に乗り換えるケースもあるようです。

外債投資における金利と為替リスクの関係と同様に、配当利回りが高ければその分、株価が下落した際の損失や収益減少を抑える“緩衝材”としての機能が得られます。高配当の魅力が、株価の下支え要因として働くという副次的な効果も期待できます

割安な高配当銘柄で業種分散することが重要

もうひとつの意味合いは、高配当株への投資が「割安株投資」につながることです。配当利回りは、1株当たり年間配当金額を株価で割って算出されます。原則として、企業の業績が悪ければ1株当たり年間配当金額は増えないし、株価がある程度下がらなければ配当利回りは高くなりません。つまり、高配当株は「企業業績の割には株価が低い」と判断できるわけです。

高配当株の割安さに関して興味深いデータがあります。東証1部上場銘柄のうち、時価総額の大きな30銘柄で構成される株価指数を「TOPIXコア30」といいます。その構成銘柄のなかから、年末時点で配当利回りの高い10銘柄を選んで投資したと仮定します。1年後の投資成果を見ると、1996年~2011年の16年間で、実に13回もTOPIXコア30の年間騰落率を上回っていました。

これはもともと米国の株価指数「ダウ工業株30種平均」(NYダウ)を対象に編み出された投資手法で、「ダウの犬戦略」と呼ばれるものです。配当利回りの高さは株価の下落を意味するとみなし、翌年は反発して値上がりするだろうという逆張り的な発想に基づいています。

高配当株への投資は、中長期で保有して配当収入を積み上げることが基本なので、実際には毎年のように投資銘柄を見直す必要はありません。銘柄の割安さを考慮すべきなのは、あくまでも購入時であり、運用の途中で株価が割高になったとしても、それほど気にする必要はないでしょう。

むしろ重要なのは、株価下落のリスクを低減するために、投資銘柄の業種を分散することです。例えば医薬品株や通信株は「ディフェンシブ株」と呼ばれ、相対的に景気変動の影響を受けにくいことで知られています。一方で商社株や銀行株などは、逆に世界の景気動向や金融情勢に敏感に反応しやすいことで知られています

これから高配当銘柄への投資を始めようという個人投資家にとっても、世界景気の先行きが不透明な現状では幅広い業種に分散投資しておくことが無難ではないでしょうか

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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