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TOBに応じて保有する株式を売却する手続きを教えてください

2006年5月2日

最近は日本でもTOBがひんぱんに実施されるようになりました。4月に総合スーパーのイオンは、傘下のダイヤモンドシティを子会社化するためにTOBを実施しました。この4月だけで、すかいらーく(持ち帰り寿司の小僧寿し本部)、味の素(香辛料のギャバン)、アサヒビール(ベビーフードの和光堂)がそれぞれ子会社化を目的としたTOBを発表しています。イオンは惣菜弁当のオリジン東秀に対してドン・キホーテが敵対的なTOBを仕掛けた際にも、ホワイトナイト(白馬の騎士)として友好的なTOBに乗り出しています。

しかし何と言っても有名なのは、昨年2月に起きたライブドアによるニッポン放送の大量株式取得に際して、親会社のフジテレビが行ったニッポン放送に対するTOBです。その直後には夢真ホールディングスが日本技術開発に対して敵対的TOBを行い、時期が時期だけにおおいに世間の関心を集めました。敵対的か友好的かを問わず、日本でも企業買収の一手段としてTOBは着実に定着しつつあるようです。

TOBとは「株式公開買い付け」を指し、企業の経営権を取得することを目的に、株式市場を通さずに不特定の株主から株式を買い集めることを示します。「公開買い付け」と呼ばれるだけに、あらかじめ買い取る株数や買い付け価格が公表されます。株主であれば誰でも平等に売却の機会が与えられることになります。今回は実際にTOBに応じるケースを見てゆきましょう。

わかりやすくするために、ここではTOBを仕掛ける側を「ストック社」、TOBされる側を「リーグ社」としておきます。またTOBは実に様々なケースがあるため、ここでは代表的な形を例示しておきます。

TOBの発表を知る

ストック社からリーグ社に対してTOBが公表されると、日本経済新聞の朝刊にその旨の公告が掲載されます。公告には、(1)TOBによって株式を公開買い付けする目的、(2)買い付け価格、(3)買い付け予定株数、(4)買い付け期間、(5)公開買い付けの代理人、などが記載されています。

一般にはTOBが発生すると、それを報じる新聞報道の記事によってTOBの内容を知ることになります。しかし正式にはこの公告に基づいてTOBの概要が世間に知らされます。公告は新聞紙面の目立たない場所に掲載されていることが多いため、日頃から注意して見ておくクセをつけておくとよいでしょう。

TOBに応じるかどうかを検討する

ここでリーグ社の株主は今後の方針を考えることになります。取りうる態度としては、(a)TOBに応じてリーグ社の株式を売却する、(b)TOBに応じないで株式市場で売却する、(c)TOBに応じないでそのまま保有する、の3つの選択肢があります。

以前からリーグ社の株主だった人にとって、TOBの発表で最も大きな関心事は、ストック社による(2)買い付け価格と(3)買い付け予定株数、であるはずです。買い付け価格はリーグ社の既存株主がTOBに応じやすいように、TOBが発表される直前のリーグ社の株価よりも高めに設定されることが多いようです。(しかし、これははっきりとは断定できません。時価よりも低い買い付け価格を提示する場合もあります。)

リーグ社の株主は、公告で明らかにされたTOBの買い付け価格が満足のいくものなら、(a)TOBに応じて売却する、という選択肢を選びます。その場合は公告で定められていた「(5)公開買い付けの代理人」を通じて売却することになります。代理人とはストック社の主幹事証券会社であることがほとんどです(ここではクールビズ証券としましょう)。

リーグ社の株主がクールビズ証券に口座をすでに持っていて、リーグ社の株式をそこに預けていれば手続きは簡単です。所定の公開買い付け応募申込書に記入して(クールビズ証券から取り寄せます)、定められた期日までにクールビズ証券に提出するだけです。これですべては完了します。

リーグ社の株主がクールビズ証券に口座を持っていない場合は、新たにクールビズ証券に口座を開設し、リーグ社の株券をそこに移管して上記の売却手続きを行うことになります。口座開設から移管の手続きが完了するまでに1週間〜2週間くらいはかかります。いずれのケースでも、売却後はクールビズ証券の口座に売却代金が入金されます。

TOBに応じるか応じないかは株主が選択できます。もちろん応じなくてもよいのですが、仮に公表された買い付け予定株数がリーグ社の発行株数の100%近いもので、TOBが完了した後にリーグ社が上場廃止になるというケースではTOBに応じた方がよいはずです。さもないと株式を売却・換金する機会がなくなってしまいかねません。

ストック社による買い付け予定株数が100%近くに定められている場合は、リーグ社の株主はTOBに応じることを考慮してもよいでしょう。しかし買い付け予定株数がリーグ社の発行株数の100%以下に定められている場合(多くは50%〜60%)では、TOBに応じたとしても抽選ではずれる可能性があります。そこで次に(b)TOBに応じずに市場で売却する、ケースを考えます。

TOBが発表された後のリーグ社の株価は、定められた買い付け価格に向かって急騰していることが多いものです。そしてTOBの買い付け期間が終了すると、抽選にはずれた株券が市場で売却されるため、今度は株価が元の水準まで(=TOBが発表される以前の水準まで)急落することになりがちです。そこでリーグ社の株主としては、あえてTOBに応じることはせずに、株式市場で売却することも考慮すべきです。リーグ社の株価は、TOB期間中は買い付け価格とほぼ同水準で推移しているはずです。

「リーグ社の株価は、買い付け価格とほぼ同水準で推移しているはず」と述べましたが、正確には少し事情が異なります。買い付け予定株数がリーグ社の発行株数の50%〜60%というケースでは、抽選にはずれるリスクが加味されているため、TOB期間中の市場での株価はTOB買い付け価格を少しばかり下回って推移している例が多く見られます。市場での売却はTOBに応じるよりも安い売り値になることがあるわけです。

要は、抽選にはずれるリスクを取ってTOBに応じるか(抽選に当たれば買い付け価格で売却できる)、抽選にはずれるリスクを回避して市場で売却するか(買い付け価格よりも低い価格で売却することになる)、どちらかを選ばなければならないことになります。きわめてまれなケースですが、時価が買い付け価格よりも高く推移しているケースもあります。この場合は市場で売却した方が有利です。

もちろんリーグ社の株主は、リーグ社が上場廃止にならずにそのまま存続するのであれば、(c)TOBに応じずにそのまま保有する、ことを選ぶこともできます。この場合の手続きは何も必要ありません。そのまま保有し続けるだけです。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。


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