1. いま聞きたいQ&A
Q

「景気」って何ですか?

今回は最も基本的な質問ですね。これまでに当コーナーでも「株価は景気の鏡である」とか、「株価は景気に先行する」という表現を何度か使ってきました。株価を動かしている最も大きな要素は「景気」です。古今東西、これは揺るぎない事実です。
将来の株価の見通しをつかむには景気の動きをつかめばよいのですが、では景気とは何でしょうか。

この質問はたくさんの読者の方からいろいろな形で寄せられています。「景気とは何ですか?」、「不景気って早い話なんなんでしょうか?」、「不景気について詳しく教えて下さい」などなど。今回は根本的な問題に立ち返ってみることにしましょう。

景気とは「経済の状態」のことです。経済の状態が活発なら、それは「景気がよい」ということになります。経済の状態が下向きなら「不景気だ」ということになります。しかしこういう表現では、わかったようでよくわかりません。目に見えるようで見えない「景気」というものの姿を、一言でうまく表すのは経済の専門家でもむずかしい作業です。

ここでは試みに、日本語ではなく英語では何と表現されているのか調べてみましょう。手元にある「英和・和英 経済用語辞典」(富士書房)によりますと、「景気」とは、

business

とだけ書いてあります。ビジネスマンの「ビジネス」です。
このほかにも「景気」を表わす言葉として、

business activity
business conditions
business climate

などが当てられています。すべて「景気」を表していますが、直訳すればいずれも「ビジネスの状態」ということになるでしょうか。「景気」と聞くと少しわかりづらくてむずかしいものに感じますが、英語で景気を表す言葉が「ビジネス」だということがわかれば、少しイメージがつかみやすくなりませんか。

つまり「景気がよい」という状態は、「ビジネスがうまくいっている」状態を指しています。反対に「景気が悪い(不景気だ)」ということは、「ビジネスがうまくいっていない」状態のことです。

私たちが「景気がよい(悪い)」と聞く時、何となくそれは「日本の景気」や、「アメリカの景気」、「中国の景気」、あるいは「ヨーロッパの景気」というように、一国や地域の経済の状態を指す言葉のように思えてきます。ところがこれを「ビジネス」という言葉に置き換えると、今度は「ソニーのビジネス」、「IBMのビジネス」、「マイクロソフトのビジネス」というイメージになってきます。

N商店はパン屋を営んでいます。焼き立てでいつもお店の周りにはいい匂いが立ち込めていて、近所でも評判のパン屋さんです。社員がキビキビ働いているせいか、出す新製品がことごとくヒットして、朝や夕方はいつもお店はお客さんでいっぱいです。
N商店の売上は月ごとにたいへん伸びて、社員の給料はよくボーナスもかなりいいそうです。N商店のビジネスは非常にうまくいっているわけです。

このような時、近所の人たちは「N商店は景気がよい」と評価します。もしN商店が株式を公開していたら(上場していたら)、株価は景気(=ビジネス)のバロメーターの役目を持っていますから、きっと株価は大きく上昇していることでしょう。そしてN商店のように順調なお店が日本のあちこちに現れているとしたら、日本の景気はよいということになります。

問題はN商店の今のビジネスの好調ぶりは、N商店独自の努力や着想、商品構成によるものなのか、それともN商店の置かれている地域や業界や国(日本)の状態によるものなのかという点です。パン屋を営んでいるお店がみんなN商店のように繁盛しているとすれば、N商店の好調さはN商店ひとりの努力でもたらされているとは限らないことになります。

自動車メーカーのビジネスはどうだろうか、電機メーカーはどうか?不動産会社は?という業界ごとのビジネスの好調、不調をひとつひとつ積み重ねていけば、日本という国全体をひとつのビジネスに見立てることができます。そしてその好不調が日本の「景気」そのものということになります。

専門的な経済用語を使わずに「景気」というものを説明しようとすると以上のようになりました。どうですか、かえって判りにくかったでしょうか。最後に「景気」にまつわる英語を先ほどの「英和・和英 経済用語辞典」からいくつか紹介しておきます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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