1. いま聞きたいQ&A
Q

日本株が低迷しているのは何故ですか? この低迷は今後も続くのでしょうか?

円高で輸出主導の経済成長にかげり

米国の格付け会社スタンダード・アンド・プアーズは、世界52カ国・地域について昨年(2007年)1年間の株価騰落率を独自の算定方法で調査・発表しています。それによると、日本はマイナス6.55%で、下から2番目の51位という成績でした。サブプライムローン問題の影響が大きかった米国や英国、フランスなどでもプラスだったことを考えると、日本株の低迷ぶりがひときわ目立ちます。

昨年から続く日本株の不調には、大きく分けて2つの理由があると考えられます。ひとつは、ここ数年、日本経済が円安を背景に輸出主導で成長してきたことです。サブプライムローン問題による景気減速に対応するため、米国では今年すでに2回の利下げを実施し、4.25%から3.00%まで政策金利が1.25%も下がりました。それに合わせて円高・ドル安が進み、これまで日本の景気拡大を引っ張ってきた「自動車」や「電気機器」など輸出関連業種の収益悪化が懸念されています。

また、世界的な経済成長を牽引してきた中国などの新興国は、おもに米国向けの輸出によって成長を遂げてきたため、米国経済減速の影響を受けることになります。これは新興国向けに輸出を拡大させる日本企業の収益にも影響を及ぼします。事実、今年に入って「造船」など新興国の経済成長の恩恵を受ける業種において、とくに株価が大きく下がる局面が目立っています。

たしかに輸出企業のなかでも製品やサービスの付加価値が乏しく、たまたま円安が長く続いたおかげで儲かっていたような日本企業は、今後は苦しいかもしれません。しかし、最近は国際優良銘柄といわれるような日本企業においても株価の下落が激しくなっています。どうしてでしょうか。

外国人投資家の失望売りが低迷を加速

そこには、2つ目の理由が関係しています。ソニーやキヤノン、本田技研工業、任天堂といった国際優良銘柄に共通しているのは、外国人の持ち株比率が相対的に高いことです。東京証券取引所が発表した統計によると、今年1月に東京・大阪・名古屋の株式3市場で外国人投資家の売買代金シェアが69.2%となり、過去最高を記録しました。また、東京市場では2007年の下期に、外国人投資家が日本株を1兆1,400億円売り越していたことがわかりました。

いま、こうした外国人投資家による日本株の「失望売り」が顕著になっています。外国人投資家は、以下のような日本の現状に失望し、不満を抱いているようです。

  • ・企業が株主を軽視する姿勢/株式持ち合いの復活、議決権のない優先株の発行、400社超の上場企業による買収防衛策の導入
  • ・効率経営への無関心/外資系ファンドによる効率経営提案の拒否、欧米企業やアジア企業と比べたROE(自己資本利益率)の低さ
  • ・構造改革路線の停滞/道路や診療報酬といった既得権益の保護、空港外資規制、金融商品取引法など、グローバル市場に背を向けるかのような福田政権の政策

このように、昨年来の日本株低迷には日本固有の問題がからんでおり、政府や企業の対応次第では低迷の長期化を危惧する声も聞かれます。その一方で、「業績と関係のない理由により下がっている」ことに着目し、割安感を指摘する専門家もいます。

たとえば今年初めて日経平均株価が14,000円台を割り込んだ1月15日の時点で、株価の割安さを示すPER(株価収益率)は、日経平均株価に採用されている銘柄の平均値で15.18倍と、34年ぶりの低水準を記録しました。1月21日には、同じく株価の割安さを示すPBR(株価純資産倍率)が、東証1部上場銘柄の過半数で1倍を下回っています。

外国人投資家による日本株の失望売りが、サブプライムローンや米国経済への失望も含む悲観心理の膨張と連鎖からもたらされた、過剰で一時的なものである可能性も、ないとは言えません。日本企業の2008年3月期決算が出そろい、円高や米国景気の企業業績に与える影響がある程度判明してからの株価推移こそが、今年の日本株を占ううえで重要ではないかと思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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