今回の質問は、証券取引所の価格決定に関するものですね。最近は新規公開市場が活況で、新規公開株が上場後数日間というものストップ高まで急騰するケースが多く見られます。
通常、証券取引所での価格決定は「個別競争売買」の原則に基づいて行われています。売りに関しては値段の低いものが優先され、買いに関しては値段の高いものが優先されます。有名な「価格優先の原則」の原則です。もうひとつ、同じ値段同士なら早い方が優先されるという「時間優先の原則」も重要です。
そして売買方法としては、「板寄せ(いたよせ)方式」と「ザラバ方式」の2種類の方式が使われています。板寄せ方式は一日のうち、前場の寄り付き、前場の引け値、後場の寄り付き、後場の引け値の計4回で用いられます。これに対してザラバ方式は、寄り付きと引けの間のいわゆる「ザラバ」で使われる値決め方式です。
質問にある「比例配分」とは、株価が制限値幅いっぱいのストップ高、ストップ安で終値を決定する場合に使われます。終値は通常なら板寄せ方式が用いられるのですが、株価を大幅に上昇させるような明るいニュースが発表されて、あまりにも大量の買い注文が殺到すると、通常の板寄せ方式では売買が成立しません。そのような場合に売買を成立させて値段をつける方法として「比例配分」方式が使われます。(逆に悪いニュースが発表されて大量の売り注文が殺到した場合も同様です。)
ストップ高、ストップ安は、取引所によって前日の終値に従って決められています。制限値幅のことで、どんなに値上がりしても一日ではそれ以上上がらない上限価格がストップ高、どんなに値下がりしても一日ではそれ以上下がらない下限価格がストップ安です。ここではストップ高のケースだけを見てゆきますが、ストップ高の水準では、たとえば成行の売り注文が100単位、成行の買い注文が100,000単位、入っていたとすると、板寄せ方式では値がつきません。そこで比例配分方式による値決め方法が登場します。
投資家からの株式の売買注文を、取引所に仲介する証券会社のことを「会員証券会社」と呼びます。取引所で売買を行うことのできる権利=会員権を持っている証券会社のことです。
ある銘柄がストップ高となっている場合は、売り物が少なく買い物が殺到している状態です。要するに数少ない売り株数の争奪戦が行われている状態です。終値の決定方式に比例配分方式が用いられる場合は、まずこの会員証券会社1社当たりに1単位ずつの売り株数が機械的に配分されます。
仮に100社の会員証券会社から買い注文が出されているとすると、1番から100番までの会員証券会社に順番に売り株数を1単位ずつ配分してゆきます。ここでは各会員証券会社から出されている買い株数は関係ありません。あくまで機械的に1単位ずつ配分してゆきます。(売り株数の総数が100単位以下のケースでは比例配分すらできません。)
1番から100番までの会員証券会社に順番に売り株数を1単位ずつ配分し終えたら、次に2順目に入ります。2順目もグルグルと1単位ずつ配分してゆきます。そしてこれを5回循環します。つまり会員証券会社すべてに5単位ずつの売り株数が機械的に配分されます。ここまでで500単位の売り株数が必要です。500単位に足りなければ、足りなくなった時点で機械的な配分はストップします。
5順目の配分を終えてもまだ売り株数が残っている場合、各会員証券会社から出されている残りの買い株数の数量に比例して按分されます。これが「比例配分」と呼ばれる所以です。
注意すべきは、売り株数が按分されるのは、あくまで証券会社に対してである点です。各証券会社は1単位とか5単位とか、あるいはそれ以上の売り株数の配分を受けたら、今度はそれを買い注文を出している顧客に配分してゆきます。そこでは各証券会社ごとに社内ルールが定められていて、それに従って配分が行われます。時間優先の原則を適用する会社が多いようですが、抽選によるところもあるようです。