金融経済教育 お金を学ぶ 社会のしくみとお金の役割
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24金融経済教育 お金を学ぶ 経済は「家計」「企業」「政府」の3つの経済主体から成り立っていることを16ページで説明しました。この3つのお金の出入りが順調に機能していれば、経済は安定します。もし、そのうちどこかが不安定な状態になれば、経済全体がうまく循環しなくなります。企業の活動が順調で、長く存続すれば、そこで働く人々の雇用も安定し、給料が順調に支払われて家計も安定します。収入が増えれば消費も増え、また企業や家計からの税金が増え、政府もさまざまな公共事業に取り組めるようになり、社会全体が好循環になります。 この循環が途切れることなく持続するためには、企業の経営や事業活動が継続して成長していくことが大切です。そのためには企業は常に中長期的な展望を持ってきちんと利益を上げ、景気や社会の変化に柔軟に対応して雇用を安定させ、良い製品やサービスを消費者に提供していくことが求められます。 景気が悪くて企業の利益が思うように上がらなくなると、次の事業のための新しい研究や企画に回すお金が減らされたり中止になり、さまざまな経費削減やリストラなどが行われ、企業の活動も停滞します。 2020年代に注目される新技術が「メタバース」です。メタバースとはネット上に構築された仮想の三次元空間のことで、利用者はこの空間の中で自分の分身であるアバターを使ってさまざまな活動ができます。 1992年に発表されたニール・スティーブンソンのSF小説『スノウ・クラッシュ』で描かれたネット上の仮想空間がルーツとされ、ゲームコミュニティの中で活用されてきました。しかし、2021年に当時のアメリカのIT大手のフェイスブックがこれを重点事業に掲げ、ヨーロッパ圏でのメタバースの開発・構築を行うと発表した際に社名を「メタ」に変更するなど、コロナ禍で一気にビジネス的な関心を集めるようになりました。現実世界で制限がかかっていたイベントや経済活動の代替先としての期待も寄せられ、仮想ショッピングモール、仮想オフィスなど活用事例も広がっています。 同様に「インターネット以来の技術革新」と称される 企業活動が活発になると、新しい技術や製品への投資が増え、大学や専門の研究機関だけでなく、長期的な視野の研究開発活動も絶え間なく行われます。研究開発には、1年から数年で実用化されるものから、新薬の開発などに代表される長い年月がかかるものもあります。価値のある発見や発明も、企業によって事業化、製品化されなければ、多くの人がその恩恵を受けることはありません。それらの研究が実を結んで、今までにない製品が生まれれば、社会や暮らしがより便利になるなどの恩恵がもたらされます。 また、技術的な面だけでなく、企業はよりきめ細かい行き届いたサービスも生み出します。ふだんの生活でなにげなく利用しているサービスも、顧客の要望や期待に応えるためのさまざまな工夫やアイデアから生まれたものが数多くあります。たとえばコンビニエンスストアでは、日常に必要なたくさんの商品を売るだけでなく、税金などの支払いができたり、荷物を受け取ることができたり、コピーや写真のプリントができるなど、便利なサービスを提供しています。技術が、暗号資産やNFT(非代替性トークン※)などに活用される「ブロックチェーン」です。簡単に言うと「取引履歴を過去から現在まで1本の鎖のようにつなげる形で記録する」もので、「分散型台帳技術」と呼ばれることもあります。暗号資産では不特定多数の利用者がそれぞれ取引履歴のコピーを持つことになるため、一部のコンピューターがダウンしても全体のシステムには影響せず、さらに、記録を改ざんできないので安全な取引を継続して行うことができます。 国内外で多くの企業が多額の研究開発費を投じて、これらの技術を活用した新商品や新サービスの開発に取り組んでいます。どんなに画期的な技術でも、実用化されなければ社会の発展にはつながりません。私たちの生活をより便利でより豊かなものにしていくためには、こうした「企業の力」が欠かせないのです。※NFT:ゲームやアートなどデジタルデータの所有権を証明できる技術のこと。ブロックチェーンを使ってデジタルデータに識別情報を持たせ、そのデータの所有者や唯一性を示す社会の安定はどこから?企業の活動がもたらす豊かな暮らし企業の研究開発が可能にする豊かな社会

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