1. 金融そもそも講座

第20回「どうやって金融情報をゲットするか PART1」

「金融市場を理解するのはなかなか難しい」と多くの人が思っているに違いない。実際に市場は難しいし、そもそも非常にへそ曲がりな存在である。決して一筋縄ではいかない。相場が動いたとき、マスコミには「これこれこういう背景で」ともっともらしい理由が並ぶ。しかし、我々には見えない相場変動要因はいっぱいある。それまで常に全部理解しようとするのは無理だ。見えそうで見えないのが市場であり、であるが故に相場師といわれる人が無傷のまま生涯を終えるのはまれだ。「分かった」と思った瞬間に分からなくなる。それが市場の難しいところであり、またそれが魅力でもある。

しかし難しいからといって何もせずにいていいわけはないし、情報を集め、自分の頭で考え、自分なりのシナリオを考えるのは楽しい。概して勉強する人の方が、勉強しない人よりも市場で勝てるチャンスは多くなる、というのが私の考え方だ。だから、私のように長くこの世界にいてそれなりに勉強してくると、他の人より「なぜこうなっているのか」に関して素早く判断・理解できることがある。変化が激しい金融の世界でも、一定の法則があるからだ。では何から市場を学んだらよいのか。

まずはネット

まずはネットを推奨したい。なぜなら、一番リアルタイムで、資料も膨大にそろっているからだ。朝来る新聞は締め切りが日本時間で午前1時過ぎ。“締め切り”ということは、それ以降(日本時間午前3時とか4時の)のニュースは新聞に載らないということだ。その時間は、夏時間ではニューヨーク市場がある米国東部はまだ昼の12時だ。ニューヨーク市場が閉まるまでにあと4時間もある。その4時間の間には実にいろいろなことが起こりうるし、実際に起きる。

東京の市場は、ニューヨーク市場を“受けて”始まることが多い。“受けて”ということは、東京市場はニューヨークが引値で上げたら上げて、下げたら下げて始まることが多いということだ。ということは我々日本人にとって一番身近な東京の株式市場の動向を予測するにはニューヨーク市場の動向を知らねばならず、それにはネットが一番だということだ。新聞は最後までのリアルでフレッシュな情報を運んではくれない。そこで実際のサイトだが、まずは日本経済新聞電子版http://www.nikkei.com/)が、その他のニュースを確認しながらという意味では有用だ。何よりも我々が慣れ親しんだ日本語で記事が書かれている。

しかし私はぜひ海外のニュース、市況は英語で読んでいただきたいと思っている。世界のニュースの8割は英語で書かれている。そして、世界的に見て相場は英語の世界で動いているといって過言ではない。その意味では、PCでもiPad でもぜひウォール・ストリート・ジャーナルのサイトhttp://online.wsj.com/)に渡って英語で読んでほしい。最初はなかなか意味をつかみきれないかもしれないが、このサイトを読んでいる10代の方々には、長い人生があるだけにぜひ英語に親しんでほしいと思っている。

情報収集の対象を日本語に限らずに英語に広げると、そこには無料の情報源が無限に広がっている。ブルームバーグやトムソン・ロイターなど世界的にマーケットを主な取材対象としているサイト(ロイターは http://thomsonreuters.com/ ブルームバーグ http://www.bloomberg.com/)は相場を考える上で非常に有用だし、iPhone iPad などアップル系のケータイ端末には無料アプリがあり、それをダウンロードすればいろいろなデータやチャート分析とともにニューヨーク市場のニュースをゲットできる。日本のケータイでもこうした情報を得られるものがある。

無限のリソース

ネットが金融を扱うのに向いているのは、ほぼ無限のコンテンツを詰め込めるからである。新聞のようなスペースの限界がないし、一般テレビのような時間の制約もない。一つの記事の中にハイパーリンクを張って、一つ一つの単語を説明するサイトを開けるようにしている市況サイトが多いし、データも無限に埋め込める。埋め込まれたエクセルシートのデータから自分でチャートを起こすことも可能だ。実に使い勝手の高いツールである。

かつ最近はネットにはテレビ以上にポイントを絞った動画が載っている。例えばウォール・ストリート・ジャーナルのサイトを開くと、「iPhone4の発売」など主なニュースには製品の動画と同時に担当記者の解説が掲載されているケースが多い。眠い目を擦りながら資料を読むだけと、実際に今話題の製品を動画を見ながら理解するのとでは全く違う。リアルに迫ってきて、理解が進むというものだ。

実際に取引をするしないを別にして、情報を得るために特定の証券会社、ネット証券の会員になって、サイトをフル活用する手もある。証券会社のサイトに入ると、そこには信頼できる各銘柄の値動きチャートなど実にいろいろなリソーシズがそろっている。実際に取引を行う前提での分析ツールだから、実に精巧に出来ていて自分で分析できる。この“自分で”というのが重要だ。ネットにはすでに出来上がったチャートなどがいっぱいある。しかし自分でデータを集め、自分で考え、自分なりの分析ツールを作り出す努力は非常に重要だ。これは個々の銘柄でもそうだが、銘柄間の相関関係を調べるのも面白い。世の中には業種がやや違うのに、なぜか連動して動く癖がある銘柄もある。そういう相関関係を時間をかけながら見つけていくのである。

どうやって英語を学ぶ

よく聞かれる質問は、「では英語はどうやって学べばよいのか」という点だ。ほかの情報源も紹介したいのだが、それは後日回しとして、その前に今日の締めとしてこの問題を扱っておく。私の場合は26歳の後半から4年間ニューヨークに駐在した。だから英語は「勉強せざるを得ないもの」だったが、その前を考えても高校時代から比較的、英語は好きだった。好きになったのは、やはり毎日英語に接して、それを訳したり、その訳が正しいかどうかを確認する手間をかけたからだ。通信社の海外部門にいたから、それが仕事でもあった。「自分は、今はそんな部署では働いていない」「海外との取引もない」と思っていて、「英語なんて」と思っている若者も多いかもしれない。

しかし、これから人口も減少して世界の中で生きていかねばならない国の国民としては、世界的な共通語としての英語は絶対に扱えた方がよい。日本語のほかに英語が出来れば、得られる情報の質と量が全く違う。私は若いときに英語を学んだのが、何よりも自分の人生で有利な点だったと考えている。別にうまくなくてもよい。さっと目を通して、「この文章には何が書いてあるのか」「どういう意味があるのか」がある程度、正確に理解できればよいのである。

それには、昔だったら「毎日英字紙に目を通す」などが一般的なアドバイスだったのだろうが、今ではネットで「海外の新聞を読む」などがよいかもしれない。ウォール・ストリート・ジャーナルは年間103ドル取られるから嫌だという人は、今は登録だけで読めるニューヨーク・タイムズの記事などがよいかもしれない。

最後に英語のヒアリングを私自身がどう習ったかを伝授しよう。私がやった方法は、

  • 1. 米軍のラジオ放送FEN(現在はAFN)毎時のニュースをラジカセにとる
  • 2. それを何回も聞いて、英語で起こす
  • 3. 自分が起こした英語を、翌朝の英字紙に載っている同じ記事と照らし合わせる
  • 4. 「a」が抜けていないか、「at」は聞けていたかなど細部まで比べる

ただ聞き流していてもダメだ。これをやると、抜群に聞き取り力がついた。今のネットの時代にはもっと良い方法があるかもしれない。

次回は、その他の情報ツールについて記す。(

ご注意:本コラムは、上記掲載日から1ヵ月程度前に伊藤洋一氏が執筆されたものです。
閲覧される時期によっては、現状に即さないことも予想されます。また、内容には仮定に基づいた記述も含まれます。ご了承ください。

バックナンバー2010年へ戻る

目次へ戻る