• トップ
  • STOCKリーグってなに?
  • スケジュール
  • 学習の手引き
  • 実施記録と入賞レポート

第8回(2007年)

表彰式&シンポジウム   <パネルディスカッション>

「金融・経済教育の現状と今後」

パネルディスカッションの写真

【パネリスト】

渡辺喜美氏(金融担当大臣)
三原淳雄氏(経済評論家)
藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク副代表)
海津政信氏(野村證券 経営役 金融経済研究所チーフリサーチオフィサー)

【コーディネーター】

槇徳子氏

「日経STOCKリーグ」も今回で8回となりますが、どのチームもなかなか難しいテーマに挑戦しています。レポートをお読みになった感想はいかがですか。

渡辺

レベルが高いですね。経済や株式市場の仕組みについて、若いうちから学ぶのは非常に大事です。アンケートを見て驚いたのですが、正規の授業として導入している学校が多く、とても心強く感じました。

三原

皆さんが作ったポートフォリオの内容は素晴らしいのに、それとは関係なく、この期間中は世界の株式市場が低迷しました。特に日本株は大きな影響を受けましたが、その理由はこの国のシステムそのものに問題点があるからだと思えます。それをどう考えて変えていくか。ある意味、今は良いチャンスではないかと考えています。

藤沢

今回のレポートには地域から世界を見る視点が多く出てきて、しかも問題意識を持って企業などに足を運び、深く調べてくる方も増えました。この面でもレベルが一段と上がったと思います。

海津

昨年に私は、世界の経済成長を取り込んでいく考え方をしてもらいたいという指摘をしました。今回は世界で通用するニッチな企業を丹念に探し出してレポートにまとめたチームなどもあり、グローバルな視点がはるかに強化されたことがうれしく思いました。

歴史に造詣が深い渡辺大臣に伺いたいのですが、日本の株式市場は明治時代においても非常に活発で、戦後の日本とは違うダイナミズムがあったようですね。

渡辺

戦前の日本企業は、資金を銀行から借りるよりも、株式市場を通じて直接調達するのが主流でした。しかしそのやり方では統制が利かないため、昭和恐慌以降に間接金融へのシフトが進められました。間接金融の場合は、金利の統制や事業の許認可などでコントロールしやすいわけです。そして当時の体制を受け継ぎながら構築されたのが官僚統制による資本主義、いわゆる「戦後レジーム」です。ところが、ベルリンの壁が崩壊してから世界経済は一体化し、大変な勢いで金融資産が増え続けてきました。それを背景に資源の争奪戦が行われ、一種の価格革命が起きている。資源を輸入して工業製品を輸出するという経済モデルの日本にとっては、由々しき事態です。従来型のシステムを一新しなければ、今後の日本経済の発展は望めません。

三原

「賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」。私はこの言葉を常に頭の中に置いて物事を見るように心がけています。歴史を振り返ると、時代が変わるときには必ず市場で波乱が起きている。今の日本がまさにそれで、その変化をきちんと読める人が勝ち残るわけです。

渡辺

いま世界中で信用収縮が起こる中で、外国人投資家が日本株を売却して利益を戻すという動きがあります。日本の金融市場をもっと力強いものにしていくためには海外から投資を呼び込み、国内に眠っているお金をもっと上手に活用する、この両面の戦略が必要です。その実現のために金融商品取引法を施行し、銀行・証券などの垣根となっていた規制も使い勝手が良い形に緩和しました。今の日本には、外側からも内側からも金融・経済を活性化していく可能性とチャンスが多くあると考えています。

藤沢

海外の方に話を聞くと「日本には投資したくない」とよく言われます。でも日本に魅力がないかというと、そうではないのですね。日本には素晴らしい企業が数多くあり、国民の教育レベルなども高い。非常に将来性のある投資先だけれども、「予測不能でどこに向かっているかわからない」という不安があるそうです。

海津

外国人投資家が不満に思うのは、国の施策が市場原理に沿ってないからです。例えば建築基準法改正の影響で住宅着工件数が落ち込むなど、外国人の目には景気に悪いことばかりしているように映る。このイメージは払拭する必要があります。

渡辺

残念ながら、政府のメッセージが少し弱いのかもしれません。やはり日本が官僚統制の国ではないことをはっきりさせることが大事です。今、私が矢面に立って公務員改革に取り組んでいるのも、そのためです。政府がやろうとしているのは、本当の意味での維新、開国だということをご理解いただき、応援をよろしくお願いします。

官僚がグローバルな視点から国益を考える仕組み作りは、ぜひ早急に進めていただきたいと思います。ところで日本のマーケットに” 逃げ足が早くない資金“を集めるためには、どういう方策が考えられますか。

海津

私は企業経営者の方にお会いするたびに、増配してほしいと言っています。なぜかというと、株価が下がっても配当は維持されますから、配当利回りが高くなる。現状では平均の配当利回りは約1.9%ですが、将来もう少し配当を増やして2.5%くらいになれば、黙っていても個人投資家が日本株を買って、マーケットが大きく活性化するはずです。

今、金融市場は激しく動いています。今後の展望と、若い方々へのメッセージをお願いします。

藤沢

世界の若いリーダーがそろって口にするのが「壁がなくなる」というキーワードです。これからは肌の色や国籍、業種などさまざまな壁を超えて世界が結び付いていく。そのベースにあるのが金融です。マネーはあらゆる国や業界に通用するものであり、それをうまく使って未来を切り開くためには、優れた知恵が求められます。その意味でも、どの国や業界で仕事をするかにかかわらず、金融の勉強がますます重要になるのではないでしょうか。

海津

当社では「街のけいざい教室」という小学生向けの経済教育の本を新たに制作し、四月から配布します。多くの人が若いうちから経済や金融に触れ、将来への知恵として生かしてもらえるための取り組みに、これからも力を入れていきます。またアナリストの視点から言うと、今後は中長期的なインフレ傾向が続くと見られ、資産の価値を守るためにはインフレに強い株式が重要になります。これから株価がどこで底を打つか、その潮目を見ることが大事だと思います。

三原

変化はチャンスであるとよくいわれます。英語の「CHANGE」と「CHANCE」を見比べると、「G」を「C」に置き換えるだけで変化がチャンスに変わります。ただ人間は保守的ですから、なかなか「G」に付いている小さな「T」を外せない。皆さんのレポートを読むと、最初はリスクを怖いものと考えていた人が多かったようです。でもリスクはコントロールできますし、そもそもリスクがなければリターンもない。市場はサブプライムローン問題で混乱していますが、関係のない株式まで売られているとすれば、これはチャンスです。しかも株価が下がって配当利回りが上がることは、リターンの可能性が増えているわけです。世の中と同じ価値観ではなく、ちょっと視点を変えて見ることが大事です。五十年後くらいに皆さんが「日経STOCKリーグへ参加したことで人生が変わったな」と思えるよう願っています。