1. いま聞きたいQ&A
Q

「長期投資」は、本当に効果があるのでしょうか?

分散投資と組み合わせることで相乗効果

株式など値動きのある相場商品への投資に際して、「長期投資」の重要性がよく指摘されます。長期投資には、相場の変動幅を小さくならす(平均化する)効果があると言われますが、具体的にはどういうことなのでしょうか。過去10年間の日経平均株価を例にとって検証してみます。

1997年~2007年の10年間で、各年末から翌年末までの日経平均株価の騰落率は、順に-9.3%、+36.8%、-27.2%、-23.5%、-18.6%、+24.5%、+7.6%、+40.2%、+6.9%、-11.1%となっています。すなわち日経平均株価に1年間投資したと仮定した場合、その成績には最高と最低で70ポイント近くの差が出ることになります。一方、1997年末から2007年末まで10年間そのまま保有した場合は、+0.3%という成績です。

このように、1年程度の短期でみると株式相場は上下に大きくブレやすい性質をもっていますが、10年間、20年間と期間が長くなるにつれて、そのブレ幅は小さくなっていくことが過去の歴史から証明されています。もちろん、あくまでもブレ幅が縮小されるだけで、長期投資をおこなえば必ずプラスになるわけではありません。

たとえば同じ10年間でも、1994年末から2004年末までの日経平均株価の騰落率は、-42%と散々な成績です。日本株なら日本株という単独の資産に投資する場合、相場をとり巻く経済環境によっては、10年程度の長期投資をおこなっても十分に効果が得られないことはあるわけです。

長期投資が本当に効いてくるのは、そこに分散投資が加わったときです。一般に分散投資の基本は、相場の動きがそれぞれ異なる国内株式、国内債券、外国株式、外国債券への「4資産分散」と言われています。これら4資産へ均等に分散投資をおこなったとして、1990年から2007年までの1年ごとの成績を調べてみると、18年間のうち5年間はマイナスになっていました。ところが、同じ4資産への均等分散で10年間の長期投資をおこなった場合、「(1980年~)1990年まで」から「(1997年~)2007年まで」の、いずれの10年間をとってもプラスになります。

このことから、長期投資と分散投資という代表的な2つのリスク低減手法は、同時に実践することによって大きな相乗効果を生み、着実な成果をもたらしてくれることがわかります。

ドルコスト平均法で体勢づくりを

もうひとつ、長期投資の効率アップにつながるのが「ドルコスト平均法」という投資手段です。これは、あらかじめ一定の投資金額を決めておき、その金額ずつ同じ銘柄を定期的に購入し続けていくもの。たとえば毎月Aという株式銘柄を購入する場合、その価格が高い月には少ない量を、価格が安い月には多くの量を買い付けることになり、結果として平均購入単価を引き下げる効果が期待できます。株価が高いときに多く買いすぎるリスクを防ぐという意味で、「時間分散」の手法とも呼ばれています。

たとえば、最低購入単位が100株の銘柄Aを毎月20万円ずつ買い付けるとします。極端な例ですが、株価が1月末に400円、2月末に600円、3月末に500円だったとき、1月は5株、2月は3.3株、3月は4株を購入し、平均購入単価は「20万×3÷(5+3.3+4)=48,780円」です。一方、同じ60万円の資金を使って銘柄Aを毎月4株ずつ購入した場合、1月は16万円、2月は24万円、3月は20万円で購入したこととなり、平均購入単価は「60万÷(4×3)=50,000円」です。つまり、同じ投資金額でも1,220円だけ前者の方が平均購入単価が低くなるのです。

ただし、ドルコスト平均法が効果を発揮するためには、「株価がある程度の幅で上下動しながら、最終的に上昇すること」という条件がつきます。株価が一本調子で上昇を続けるような場合は、最初の安い時点でまとめて購入しておいた方が多くの収益につながるし、株価がいつまでも低迷を続けるようなケースでは、せっかく安値で多くの量を購入した甲斐がありません。

その意味では、なかば自動的に投資という行為を積み立てていくドルコスト平均法は、収益アップの手段というよりもむしろ、相場の変動に惑わされず、淡々と長期投資を続けるための体勢づくりと考えた方がいいかもしれません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

バックナンバー2008年へ戻る

目次へ戻る