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1980年代の日本はなぜバブル景気になったのですか?そしてなぜバブルは崩壊したのですか?(その3)

2005年12月13日

3回目は、レーガノミックスによって復活を遂げた1980年代前半のアメリカ経済とその反動、プラザ合意による為替レート調整までを説明いたします。

5.バブル発生の背景(四) レーガノミックスと「双子の赤字」

1980年代前半にレーガン大統領によって実施された新経済政策、レーガノミックスは、大規模な減税と産業界への規制緩和、軍事支出の増大を組み合わせたものです。まだどの国もこのような革新的な経済政策を採用したことはなく、当初からアメリカのエコノミストの間でも政権発足時は「壮大なる実験」と言われたものです。

それでもレーガノミックスによる減税と政府支出の増大は、おおいに景気を刺激することになりました。不況と物価上昇、高金利にあえいでいたアメリカ経済は、政権1期目の半ば、1983年ごろから見事な復活を遂げました。ベトナム戦争の終結から10年近くが経過し、インフレと不況にあえいでいたアメリカは急速に自信と活力を取り戻してゆきました。

レーガノミックスの光の部分がアメリカ経済の活性化であるとすれば、影の部分は「双子の赤字」問題です。すでに70年代からアメリカ国民は、貯蓄よりも消費を好む過剰消費体質に傾いていました。それがレーガノミックスによる大規模な減税によってますます消費が刺激され、アメリカ国内での生産量では足りない分を海外から大量に輸入するようになりました。この結果、80年代に入って貿易赤字は急速に膨んでいったのです。

加えてレーガノミックスは巨額の減税や軍事支出の増大を行ったために、財政収支の赤字も一気に拡大しました。財政赤字をまかなうためには大量の国債を発行する必要があります。そのためには高金利を続けなくてはならず、国債費(元本償還と支払い利子の合計)が増え続け、財政赤字も拡大の一途をたどりました。アメリカの財政赤字は、レーガン政権発足前の1980年には▲738億ドルだったものが、1983年には▲2078億ドルに急激に拡大し、1986年には▲2212億ドルにまで達しています。

財政赤字の膨張によって金利が押し上げられ、それにつれてドル高がますます進みました。レーガン政権は「強いアメリカ」の復権の象徴として「強いドル」すなわちドル高政策を採っています。アメリカの長期金利(30年物国債金利)は1980年から1985年まで2ケタ台の高金利が続き、これに連動して為替市場では、1978年に1ドル=176円だった円ドルレートが、1982年11月には1ドル=277.65円と1977年以来のドル高を記録しました。

経済学の教科書では、「経常収支が黒字の国の通貨は上昇し、赤字の国の通貨は下落する」と教えています。経常収支とは、貿易収支、サ−ビス収支、所得収支、経常移転収支の合計で、中でもウェートの大きいのが貿易収支です。変動相場制の下では、為替レートが変動することによって、経常収支の赤字や黒字は修正されることになります。ところが80年代前半のアメリカでは、経常収支(=貿易収支)が大幅な赤字なのにドルが上昇を続けるという事態が起こりました。これは教科書の教えとは正反対の現象です。その原因は何と言ってもアメリカの空前の高金利にあります。

1983年以降、日本をはじめ世界は同時景気拡大の局面を迎えるのですが、それはアメリカが減税とドル高によって、世界の生産物をどんどん輸入してくれたおかげです。これこそレーガノミックスの恩恵と言えるでしょう。ところが当のアメリカでは、空前の財政赤字が高金利とドル高をもたらし、それによって貿易赤字が加速度的に膨らむようになったのです。レーガノミックスは「小さな政府」を目指すという当初の意図とは別の部分で、貿易と財政の「双子の赤字」問題に直面することになりました。

この結果、アメリカは1985年に史上最大の債務国に転落してしまいました。アメリカの対外純資産は1981年に1400億ドルの黒字だったのですが、1977年以降は毎年▲1000億ドルずつの経常赤字を重ねたために、1985年にはついにマイナスに転落し1986年には▲2600億ドルの赤字に落ち込みました。

第二次大戦後の世界経済は、アメリカのドルを基軸通貨とする経済体制を構築しています。基軸通貨とは、貿易の決済をすべてドルで行うという仕組みです。貿易とは相互の信用の上に成り立っており、あらゆる信用の基礎が「ドルへの絶対の信任」に基づいています。

そのアメリカが世界最大の債務国に転落してしまったのです。企業が倒産する理由は過大な借金によるものがほとんどです。アメリカは国家財政の運営にあたって、当時の日本をはじめ海外からの資金がアメリカの国債を購入することに頼らなければなりません。絶対の信任を寄せられていたドル(=アメリカ)への信用がひとたび崩れれば、アメリカの国債は買い手がつかず、アメリカは財政赤字を埋めきれなくなります。

そうなるとますます金利は高騰し、アメリカの民間企業や消費者を苦しめるようになります。おそらく株価も大幅に値下がりして、その影響は世界経済を直撃することになるでしょう。レーガノミックスの影の部分が債務国への転落をもたらし、磐石を誇っていたアメリカ経済の土台が突然不安定なものになってしまいました。これは世界の経済体制の根幹を揺るがす大事件です。世界経済は「ドル暴落」という最悪の事態に対する脅威を抱えるようになったのです。

1984年の大統領選挙において歴史的な圧勝を収めたレーガン大統領は、政権担当2期目において経済政策を大転換させます。それまでの「ドル高=強いアメリカ」という金看板を捨て去って、アメリカ経済を弱体化させているドル高の修正に舵を切るのですが、それが「双子の赤字」という巨大な不均衡の是正を目的としたプラザ合意です。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。


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