1. いま聞きたいQ&A
Q

アクティブ型ファンド(投資信託)に投資する意味は、どこにあるのでしょうか?

インデックス型に勝てるのは4割程度!?

ファンド(投資信託)は運用手法の違いによって、「インデックス型」と「アクティブ型」の2つに大別することができます。日本株ファンドを例にとると、インデックス型は、日経平均株価(日経225)やTOPIX(東証株価指数)などの株価指数を構成する銘柄にまんべんなく投資することで、市場平均に連動した運用成果をめざすタイプのファンドです。一方のアクティブ型は、ファンドマネージャーなど投資の専門家が銘柄を選別して、市場平均を上回る運用成果をめざすタイプのファンドを指します。

日本株ファンドの運用実績に関するある調査によると、2009年3月末時点で過去1年・3年・5年のいずれの期間をとっても、アクティブ型はその6割以上がインデックス型に負けて(劣って)いました。この調査ではアクティブ型のなかに、TOPIXや日経平均株価の構成銘柄ではない中小型株に投資するタイプも含まれているため、多少は割り引いて考える必要があるでしょう。しかしながら、米国でも国内株に投資するアクティブ型ファンドの運用実績が、S&P500種株価指数などの市場平均を上回るケースは3~4割にすぎないというデータがあります。

このように投資信託の業界では、年間の運用実績でインデックス型(市場平均)に勝てるアクティブ型の株式ファンドはおおむね4割程度であり、しかもその勝てるファンドの顔ぶれは毎年のように変わる、というのが通説のようになっています。なぜアクティブ型ファンドは、市場平均を上回ることができないのでしょうか。

企業の情報開示が進み、不公正な取引への監視も強まるなか、今日では株式相場を動かす要因となるような企業情報が迅速かつ公平に広まるようになっています。ファンドマネージャーのような専門家から一般の個人投資家にいたるまで、有望な銘柄を熱心に発掘する市場参加者も増えたため、企業に関する過去や現在の情報は、従来に比べて素早く株価に織り込まれるようになりました。

その結果、本来なら市場に先んじて有用な企業情報にもとづく投資をおこない、「自分を相場が追かけてくる」ような状態を理想とするアクティブ型ファンドの運用が、反対に「相場への追随(後追い)」となる傾向が強まり、市場平均との差が付きにくくなってしまったようです。

市場平均を上回ることは本当に重要か?

投資家が運用の委託手数料として毎年負担する信託報酬を見ると、日本株ファンドのアクティブ型は平均1.4%程度と、インデックス型より0.8%程度高くなっています。株価指数への連動をめざし、いわば機械的に銘柄を売買するだけのインデックス型に対して、アクティブ型はより収益につながりそうな銘柄を選別して投資する分、手数料も高く設定されているわけですが、これも市場平均を上回れない一因となっているようです。

手数料が高くて4割程度しか市場平均に勝てない現状では、少なくとも費用対効果の面から見るかぎり、アクティブ型ファンドに投資する意味は乏しいと感じる投資家が多くても致し方ないかもしれません。今後は米国のように、純資産総額の増加に応じて信託報酬が下がる仕組みを取り入れるなど、商品性の改善へ向けた努力がいっそう求められてきそうです。

もうひとつ、あえて考えてみたいことがあります。それは「アクティブ型ファンドの運用が市場平均を上回ること」が、本当にそれほど重要なのかということ。投資家がファンドを通じて最も実現したいと願うのは、中長期的に資産を増やすことではないでしょうか。だとすれば、もちろん程度の問題はあるものの、たとえ市場平均に負けても運用が結果的にプラスなら、当初の目標は達成されたことになります。

運用の実績やコストといった「数字」を重視するのは当然のことですが、一方でアクティブ型ファンドにはそれら以外の機能や使い道があることも、もっと語られていいように思います。例えば投資家によっては、企業の社会的責任などの観点から、株価指数を構成する銘柄のなかで投資したいものと、したくないものがはっきりしているケースもあるでしょう。現時点で5つの銘柄に興味があるけれど、購入金額やリスクを考えると現物株投資には踏み切れないため、それらを多めに組み入れたファンドから投資を始めて、銘柄への理解を深めていきたい――という人もいるかもしれません。

アクティブ型ファンドとは本来、その中身が多様であるがゆえに、投資家の多様なニーズに応えられるもののはずです。そうした特性をアピールする姿勢が、当事者である運用会社からもあまり感じられないのは、非常に残念な気がします。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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