1. いま聞きたいQ&A
Q

金融市場を、短期ではなく長期の視点で見るためのポイントを教えてください

企業が自らに対して長期投資を行っているかどうか

米国のトランプ大統領にまつわる話題が、連日のように日本の金融市場をにぎわしています。特に市場が注視しているのは、トランプ政権が打ち出している経済政策の二面性です。減税やインフラ投資、規制緩和などの成長戦略を「光の部分」とするならば、保護貿易やドル高けん制、移民抑制などの主義主張は「影の部分」というわけです。

それぞれの政策について実現の可能性や時期、実現した場合の影響度などは、現時点で正確に見通すことができません。にもかかわらず、市場は「光と影のどちらの部分が強く出るか」といった予想に躍起となり、必要以上の期待や不安をかえって募らせているように思えます

例えば株式市場では、今後の有望銘柄についてさまざまな意見や憶測が飛び交っています。最もオーソドックスなのは、光の部分の恩恵を直接的に受けそうなインフラや素材、金融関連が有望という考え方。ただし、今年(2017年)に入ってからはこうした「トランプ銘柄」をさらに細かく選別する動きが強まり、米国議会の主流派である共和党の意向に沿うという意味合いから、防衛やヘルスケア関連などに人気が集まりました。

“トラの尾を踏まぬ銘柄”として、トランプ政権による通商リスクの影響を受けにくい企業に注目する市場関係者もいます。米国での販売が多い製造業のなかでも、現地生産比率が相対的に高い企業であれば、円高や関税引き上げなどの悪影響が少なくて済みます。そのような銘柄を重点的に組み込むことで、影の部分のリスクをヘッジ(回避)しようという試みです。

これらの意見や憶測は、いうまでもなく長期の視点に立ったものではありません。厳しい見方をするなら、トランプ政権の言動を都合よく解釈して目先の「買う理由」や「買わない理由」をこしらえただけともいえるでしょう。もちろんトランプ政権が長期にわたって続く可能性はあるし、政策の光と影の部分がともに現実化して、日本企業に多大な影響を与え続けることになる可能性も否定はできません。しかし、繰り返しになりますが現時点でそれは誰にも分からないのです。

見通せないような経済環境ばかりに目を奪われるのではなく、もう少しじっくりと個別の企業を見つめてみてはどうでしょうか。私たちが長期の視点で株式投資を考えるにあたっては、企業そのものが長期の視点を持っているかどうかに着目する必要があります。例えば設備投資や研究開発投資への取り組み、将来的なリスクヘッジに向けた自己資本の充実、長期に活躍できる正社員比率の向上などは、企業が自らに対して長期投資を行っていることの裏付けとして大きなヒントになりそうです。

金価格を物差しとして為替の長期トレンドをつかむ

よく分からないのは外国為替市場も同様です。FRB(米連邦準備理事会)は今年3月15日に3カ月ぶりの利上げを発表し、年内に最低でもあと2回の利上げを予定しています。ユーロ圏で賃金の上昇傾向が加速しつつあることを受けて、ECB(欧州中央銀行)も4月から事実上の金融緩和縮小に踏み切る見込みです。一方で日銀は強力な金融緩和の姿勢を崩していないため、金利格差という観点からみると中期的には主要3通貨において「円の独歩安」という局面さえ予想されます。

しかしながら、円・ドル相場の動向に関して専門家の見解は大きく割れているのが実情です。今年末時点のレートについて円高派では1ドル=100円~105円、円安派では1ドル=120円~125円の水準を予想する人が多くなっています。専門家が円安進行に確固たる自信を持てず、投資家も素直に円売りへと向かわない背景には、トランプ政権にかかわるリスク以外に欧州の政治リスクなども意識されているという事情もあるようです。

外国為替市場では投資家が世界中のリスクに目を向けがちであり、悲観論が広がりやすい分だけ、安定通貨と見なされている円に退避資金が流入して円高になりやすいともいえます。ただし、私たちが長期の視点で為替の方向性を考えるうえでは、こうした間接的な影響よりも、やはり通貨そのものの価値(信用)という直接的なファクターを重視すべきでしょう。そのための手がかりとして、例えば金価格が参考になります

金の国際価格はドル建てで表示されるため、国内で金を取引する場合は国際価格を自国通貨建ての国内価格に換算して行います。国際金価格は11年に1トロイオンス=1,900ドル超の史上最高値を記録しましたが、それと前後してユーロ建てやポンド建ての金価格も史上最高値を更新しました。

ところが日本国内の円建て金価格だけは、1980年に記録した最高値がいまだに更新されていません。これは金に対して主要通貨の価値が軒並み下がるなかで、円の価値だけが相対的に高位を維持してきたことを物語ります

このように、金価格を物差しとして各国通貨の価値を比較してみると面白いのではないでしょうか。ドル建て、ユーロ建て、円建ての金価格について、それぞれの騰落率を数カ月おきなどの定期で比較・検証することで、為替相場の長期的なトレンドが見えてくるかもしれません。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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