1. いま聞きたいQ&A
Q

各種の投資優遇税制を選ぶ際のポイントを教えてください

資産運用プラス長期の家計管理、という観点も

日本の一般個人が利用できる投資優遇税制には、大きく分けてNISA(少額投資非課税制度)と個人型DC(確定拠出年金)の2種類があります。このうちNISAについては2018年から新たに「長期積立型」が加わることが決まっており、14年に始まった「成人向けNISA」、16年に始まった「ジュニアNISA」と合わせて3種類の制度が並立することになります

「iDeCo(イデコ)」の愛称で呼ばれる個人型DCは、利用対象者が今年(17年)1月から専業主婦や公務員、企業年金のある会社員などにも広がり、実質的に現役世代のほぼすべてをカバーすることとなりました。私たちにとって資産形成や老後資金づくりの環境が整いつつあることは確かですが、一方でこれだけ選択肢が増えてくると、どの制度を使ってどのような投資・運用を行えばいいのか迷ってしまう人も多いことでしょう。

投資の目的あるいは将来的な投資資金の使途ごとに制度を使い分けることが重要といった声も聞かれますが、NISAや個人型DCを入口としてこれから初めて投資に臨む人も多いことを考えると、投資の目的が明確なケースはむしろ少ないのが実情だと思われます。現実論としては目的よりも投資期間や投資金額、投資対象、投資資金の流動性、税優遇の内容など、より実務的な項目が選択のポイントになるのではないでしょうか

例えば40歳未満の人の場合、投資期間を最も長く設定できるのは個人型DCですが、老後資金をつくるための年金という性格上、原則として60歳まで引き出すことができません。ジュニアNISAも子供や孫が18歳になるまで引き出すことができないため、現状の制度設計では投資期間が終わった後も18歳になるまでは資金をそのまま口座に置いておく必要が生じます。

すなわち個人型DCとジュニアNISAに関しては、途中解約を考えなくてよい純粋な余裕資金での運用が大前提となるわけですが、実はこれらの制度には資産運用以外にも大きな利用価値があります。

個人型DCでは、(1)掛け金全額が所得税や住民税の控除対象になる(2)配当や分配金を含む運用益が全額非課税になる(3)運用資産を受け取る際にも税控除が見込める――という具合に税優遇が非常に手厚く備わっています。その人の年齢や職業(加入者区分)、掛け金の大きさなどにもよりますが、人によっては資金を定期的に拠出することによる節税効果が最大の魅力と映る場合もありそうです。

ジュニアNISAの年間80万円という非課税枠は生前贈与の非課税範囲である年110万円に収まるため、祖父母世代が孫世代に資金を拠出した場合、生前贈与を通じて将来の相続税を減らすという効果が期待できます。このように個人型DCとジュニアNISAを選ぶにあたっては、単純に運用で資産を増やすということだけでなく、長期にわたって家計を上手に管理していくという観点も動機のひとつになるといえます

購入済み資産の入れ替えができるのは個人型DCだけ

18年から始まる予定の長期積立型NISAは、正直いって何とも中途半端な制度という印象が否めません。非課税期間が最長20年間と現行の成人向けNISAより延びたものの、年間の投資上限額は40万円と3分の1まで減少し、投資対象もETF(上場投資信託)と公募株式投信の一部に限られる見込みです。また、現行NISAとの併用はできません。

とりあえず現時点では、個人型DCで所得控除のメリットが受けられない専業主婦や、将来的にまとまった資金需要が発生するため資金の流動性を確保しておきたい人などが、コツコツと積み立てながらできるだけ長期で運用していく場合に向いているといえます。しかしながら、いずれ近いうちに現行NISAの非課税期間が恒久化される可能性は残っており、あえて投資金額や投資対象が限定された長期積立型NISAを選ぶ意味がどれほどあるのかは不透明です。

これまでも、そしてこれからも私たちを最も悩ませることになりそうなのが投資対象の問題です。いずれの制度においても、投資対象は口座を作った金融機関が扱っている金融商品の中からしか選ぶことができません。つまるところ、投資対象を選ぶことは口座を作る金融機関を選ぶことに直結するわけです

投資対象という点で、投資の初心者にとって最も無難と考えられるのは、ETFやインデックス投信を使って主要4資産(国内外の株式と債券)の指数に分散投資する方法でしょう。その意味では、多くの専門家が指摘しているように、信託報酬が低い投信の品ぞろえがよい金融機関および制度を選ぶべきという意見は正しいと思います。

ただし、厳密にいうと過去のデータから主要4資産への投資で好成績が期待できるのは「10年以上の長期で各資産に25%ずつ均等投資し、1年ごとに各資産のバランス調整を行ったケース」です。すでに購入した資産のバランス調整ができるのは、スイッチングが認められている個人型DCだけですが、投信によっては信託財産留保額というコストがかかる場合もあるので注意が必要です。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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