1. いま聞きたいQ&A
Q

「株式テーマ」に沿った投資について教えてください(前編)

東京オリンピックに向けて注目を浴びる無電柱化

最近話題となった株式テーマについて、いくつか具体例を挙げてみましょう。今年(2016年)の夏、市場を大いに沸かせた銘柄といえば、何といってもスマホ向けゲームアプリ「ポケモンGO」の任天堂でしょう。同社が出資する米ナイアンティックが7月6日に米国で「ポケモンGO」の配信を始めると、その爆発的な人気によって国内での配信前にもかかわらず任天堂株に注目が集まります。

任天堂の株価は7月7日の14,935円から19日の31,770円(いずれも終値)まで、10営業日足らずで2倍超に上昇し、その騰勢は関連銘柄にもいち早く伝播します。同じ7月中旬の短期間に、子会社がポケモンのテレビ・劇場版アニメを手掛けるイマジカ・ロボットホールディングスの株価は2.8倍に、子会社が大阪府の万博記念公園内で「ポケモンEXPOジム」を運営するサノヤスホールディングスの株価は4.6倍にそれぞれ上昇しました。

これまで自社製のハードにこだわり、スマホゲームとは距離を置いてきた任天堂の“変身ぶり”が好意的に評価された格好ですが、市場の反応はいささか性急かつ過剰だったといわざるをえません。当の任天堂が7月22日に「ポケモンGOの連結業績に及ぼす影響が限定的であること」を発表すると、いずれの銘柄でも相場は急速に沈静化へ向かい、株価は大きく下落しました。

この事例は新製品の人気がそのままテーマ化したパターンですが、新製品と企業収益との関連性が分かりにくいことから、株式テーマとしての有効性には当初から限界があったのかもしれません。今後の波及効果については未知数であり、市場の注目や期待が失われたわけではありませんが、現状でみる限り、テーマとしての最盛期は意外に短かったといえそうです。

もうひとつ、夏場に盛り上がった株式テーマがあります。20年の東京オリンピックに向けて、政府は電線を地中に埋めて電柱をなくす「無電柱化」を本格的に進める計画を打ち出しました。景観の改善や防災といったインフラ実務面に加えて、経済対策の一環としての狙いもあるようです。この計画に、新東京都知事となった小池百合子氏が国会議員時代から前向きだったという背景もあり、7月31日の東京都知事選をはさんで、無電柱化に関連した銘柄がにわかにクローズアップされることになります。

ゼニス羽田ホールディングスは、マンホールなど下水道関連製品を中心に、道路下に設置される電線共同溝も手掛ける東証2部上場企業です。同社の株価は6月16日の148円(年初来安値)から8月1日の324円(年初来高値)まで2倍超に上昇しました。同じく東証2部のイトーヨーギョーは、電線ケーブルを収納できるコンクリートボックスなど、無電柱化の新製品を開発している企業です。同社の株価も6月24日の536円(年初来安値)から8月23日の1,160円(年初来高値)まで2倍超の上昇を記録します。8月末現在、両銘柄ともに目立った値崩れは起こしていません。

無電柱化は東京オリンピックまで、少なくとも今後4年間は期待できそうな株式テーマですが、逆にいえばその先、社会的な要請がどの程度まで広がるのか読めないのが実情です。あくまでもオリンピックというイベントに限定された需要として考えるならば、4年程度の中期的なテーマと捉えておくのが無難かもしれません。

上昇と下落の両局面で値動きが荒くなりやすい

もっと息の長い株式テーマとして、例えば高齢者ビジネスがあります。日本では男女ともに平均寿命が80歳を超えており、団塊の世代が80歳代を迎えるのが27年からであることを踏まえると、これから10年以上は高齢化に対応したビジネスが発展する余地は大きいと思われます。

数ある高齢者ビジネスのなかでも、先日まで特にその躍進ぶりが際立っていたのがピーシーデポコーポレーションです。同社はもともとパソコンの専門店を展開していましたが、おもに中高年を対象とする会員制のIT(情報技術)機器サポートサービスに乗り出して以降、ビジネスが急成長。株価はアベノミクス相場が始まった12年秋から今年8月上旬までの間に10倍以上も上昇しました。

ところが8月14日に、契約を解除した80歳代の会員が高額の解約金を請求されたという内容の書き込みが投稿サイトにあり、ネット上で同社への批判が急速に広がっていきます。市場も敏感に反応し、株価は8月12日の1,450円から29日の692円(いずれも終値)まで、2週間あまりで半値以下に急落しました。

こうしてみると、株式テーマに乗って注目を浴びた銘柄には短期間に投資が集中するため、株価の上昇と下落の両局面で値動きが荒くなりやすいことが分かります。これから何がテーマになるかを予測するのも難しいため、投資の初心者や長期で資産形成をめざす人などは、株式テーマに沿った投資は敷居が高いと感じるかもしれません

しかし、そこは目のつけどころ次第ではないでしょうか。投資の初心者だからこそ短期的な思惑やトレンドに惑わされず、気長に取り組めるテーマというものもあるはずです次回はそのあたりの話を中心に、引き続き株式テーマについて考えてみます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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