1. いま聞きたいQ&A
Q

「投資のプロ」の動きには素直に従った方がいいのでしょうか?

市場平均に負け続けているヘッジファンド

東京証券取引所が発表している投資部門別売買動向によると、日本の株式市場において取引の6~7割を占めるといわれる「海外投資家」は、日本株を今年(2016年)の年初から3月第4週(22日~25日)までに12週連続で売り越しました。売り越し額は累計で5兆47億円に上ります。海外投資家はアベノミクス相場の起点となる12年11月から15年末までに日本株を17兆円超買い越して株価上昇のけん引役を果たしてきましたが、今年に入ってわずか3か月間でその3分の1近くを売った計算になります

日本株を取引している海外投資家の多くは年金基金や投資信託、ヘッジファンドなどの機関投資家です。こうしたプロの投資家たちが買い越しから売り越しに転じたのを見て、今後の日本株相場に不安を感じている人も多いかもしれません。私たち一般個人の中には元来、「投資のプロ=運用が上手い」という思い込みがあるため、日経平均株価がずるずる下がっていくのを目にすると、やはりプロの判断は正しいとか、プロの動きには逆らわない方がいいといったイメージを抱きがちです。

しかし、実はそうとも限りません。株式を中心に投資する株式ヘッジファンドの運用成績は、09年から15年まで7年連続して米国のS&P500種株価指数を下回っています。すなわち、株式投資のプロであるはずの株式ヘッジファンドは市場平均に負け続けているのです。ちなみに今年に入ってからはさらに運用成績の悪化が目立つ状況です

ヘッジファンド全体でみると、運用不振から15年には廃業(閉鎖)が900社を超え、08年のリーマン・ショック以降では最多を数えました。業務停止したヘッジファンドは顧客に資金を返還するため、それまでに利益の出ていた日本株を売却し、これが海外投資家による年初からの日本株売り急増の一端を担ったともいわれています。

ヘッジファンドの運用成績がさえない要因として、例えば08年以降の世界的な金融緩和の影響が挙げられます。市場にあふれた緩和マネーが大量に流れ込んで運用資産が膨らむと、ヘッジファンドは多額の資金をさばくために時価総額の大きな銘柄を組み入れる必要に迫られます。ただし、それは株価指数との相関性が高まることを意味するので、運用の独自性を打ち出すためには何らかの工夫を凝らさなければなりません。

株式ヘッジファンドはこぞって高成長が見込めるIT関連銘柄への投資を増やしましたが、結果として多くのファンドが同じ銘柄で損失を抱え、それを損切りすることで互いの運用成績を傷つけ合うという悪循環に陥った模様です。

最新の運用技術も決して万能ではない

ヘッジファンドに限らず、投資や資産運用のプロたちは日々、少しでもライバルに勝る好成績を上げようと最新技術の開発や導入にいそしんでいます。特にリーマン・ショック後、彼らが力を注いだのが相場急落による損失をいかに最小限にとどめるかという点でした。しかしながら、より安全な運用をめざした投資手法の高度化が、かえって相場の不安定化や一方向への偏りを招くという皮肉な副作用も生じており、技術的にみても彼らの投資が常に優れているとは言い切れない面があります

例えば、あらゆる資産のボラティリティ(価格変動率)を監視して、それが一定の水準を超えた資産を自動的に減らすという手法。米国JPモルガン・チェースの推計によると、こうしたボラティリティを投資指標とするファンドの資産総額は約130兆円に及んでいます。市場関係者の間では、多くの投資家が同じ手法でリスクを察知するようになった結果、市場は一方向に激しく動きやすくなったという指摘があります。

値動きが緩やかで相対的にリスクの小さい銘柄を機械的に抽出し、それらに集中投資する「最小分散」と呼ばれる手法も注目を集めています。そこでは例え割高でも値動きが安定した銘柄が選ばれるため、この手法を採用したファンドに大量の資金が集まると、割高な銘柄がさらに買われて割高になる傾向が強まります。

最小分散という手法は本来、過大評価されやすい分だけ反落もしやすいという高リスク銘柄の特性を逆手に取ったものと考えられます。ところが低リスク銘柄に人気が集中して過度に買い上げられれば、低リスク銘柄もまた反落しやすくなるわけで、この手法はなかば自分で自分の首を絞めるような自己矛盾を抱えています。

このように投資のプロといえども常に的確な投資判断ができるわけではないし、プロが用いる最新の運用技術がすべての投資環境において万能なわけでもありません。私たち一般個人にとって大切なのは、プロの投資行動を必要以上に気にかけたり追従したりすることではなく、その背景にある行動原理をできる限り理解することではないでしょうか

プロの投資行動が多くの場合、極めて論理的になされていることは間違いありません。その論理プロセスを少しずつでも学びながら、市場や相場に対する多種多様な「見方」を身につけていくことが、私たちにとって有効な投資の道しるべになるのではないかと思われます。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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