1. いま聞きたいQ&A
Q

消費再増税の先送りと衆議院解散・総選挙について、どのように考えればいいですか?

消費増税後の景気低迷にいち早く反応した日銀

この1カ月ほどの間に、わが国では政治・経済にまつわる重大ニュースが相次ぎました。日銀の追加金融緩和に四半期GDP(国内総生産)のマイナス成長、そして安倍政権による消費再増税の先送りと衆議院解散・総選挙の発表――。あまりのサプライズの連続に、これらがいったい何を意味するのか、よく分からないという人も多いかもしれません。

そこで、まずは今回の一連の出来事が「なぜ、このタイミングで起こったのか」を整理してみたいと思います。背景にあるのは、今年(2014年)4月の消費増税後に落ち込んだ景気がいっこうに回復の気配を見せないという事実です

例えば個人消費は当初、4~6月期こそ増税前の駆け込み需要の反動により一時的に減少するものの、その後は夏頃から増加に転じると予想されていました。円安・株高による企業収益の改善が賃上げを通じて家計の所得増につながり、消費が拡大へ向かうという「アベノミクスの好循環」が機能すると考えられていたからです。

ところが実際には、雇用情勢の改善や賃上げによる所得増がある程度は実現した一方で、消費増税と円安による物価上昇が思いのほか家計を圧迫しており、個人消費の拡大には結びついていません。7~9月期にサラリーマンや公務員が受け取った雇用者報酬は額面ベースで前年同期比2.6%増でしたが、物価上昇の影響を除くとマイナス0.6%となっており、いわゆる実質賃金は3四半期連続で減少しています。

円安が続いているのに思ったほど輸出が伸びず、製造業を中心に大企業の国内生産が増えないことから、設備投資も伸び悩みが目立ちます。また、日本における雇用全体の約7割を占める中小企業にとっては、急激な円安が輸入原材料価格の上昇という形でのしかかっており、賃上げや設備投資はままならないのが現実です。

こうした実体経済の現状に、いち早く反応したのが日銀です。今年4月には1.5%に達していた消費者物価指数の上昇率が、消費増税後の景気低迷によって頭打ちとなるなか、10月中旬には原油の国際価格が急落しました。それらの価格情勢をもとに日銀が2015年度の物価見通しを集約したところ、物価上昇率が目標とする2%に届かないことが明確となり、デフレ脱却への道のりに支障が出る懸念が生じたため、10月31日に追加金融緩和を発表することとなったのです。

衆議院解散はマイナス成長の政治的影響をかわすため?

安倍晋三首相はかねてから、今年7~9月期のGDPを踏まえたうえで、2015年10月に予定している8%から10%への消費再増税の是非を判断すると明言していました。そのため、日銀がなかば市場の意表を突く形で追加金融緩和を発表した際には、そこに「予定どおりの消費再増税をサポートする狙い」があるのではないかという見方も広がりました。

ところがその後、安倍政権サイドからはGDPの公表を待たずして、消費再増税の先送りと衆議院解散・総選挙のうわさが漏れ聞こえてくるようになります。

安倍政権の真意を測りかねた市場が疑心暗鬼にかられるなか、11月17日に内閣府が発表した7~9月期の実質GDP速報値は、前期比年率換算でマイナス1.6%と、民間予想に大きく反して2四半期連続のマイナス成長を記録。翌18日の記者会見で安倍首相は、同月21日の衆議院解散と消費再増税の1年半先送りを表明しました

このように順を追って一連の出来事を振り返ると、安倍政権はかなり早い段階からGDPの数値が低調なことを把握していた節があります。その政治的な影響を最小限にとどめるために、衆議院解散という切り札を使ったのではないでしょうか。

単純にGDPの発表を受けて消費再増税の先送りを決めた場合、アベノミクスの失敗が日本の財政再建を後退させるというイメージが広がり、野党に付け入る隙を与えることにもなりかねません。しかし、前もって衆議院の解散をほのめかしたことにより、野党は選挙で不利になる「消費再増税の予定どおりの実行」を主張できなくなり、増税先送りに同調せざるを得なくなったというわけです。

もちろん安倍首相の言うとおり、増税を強行して日本経済がデフレに逆戻りし、結果として税収が減ってしまったら元も子もないのは確かです。また、アベノミクスの完遂を目指す安倍政権が、最も勝算が立つと考えたこの時期に解散・総選挙に打って出るのは、政権の長期安定化を図るうえでは当然の判断ともいえそうです

ただし、こうした安倍政権の説明や行動は、何だかふに落ちない気がしてなりません。安倍首相はこのたびの衆院選を「アベノミクスの是非を問う選挙」と位置付けていますが、それならば消費再増税の是非とともに、安倍政権がこれまで進めてきた成長戦略の是非も問われるべきではないでしょうか。

次回はその辺りの話題を中心に、アベノミクスがもたらした日本経済の現状と今後について具体的に考えてみたいと思います。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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