1. いま聞きたいQ&A
Q

NISAに適した運用方法とは、どのようなものですか?

NISAは利益を出してこその制度なのか?

来年(2014年)から始まるNISA(少額投資非課税制度)について、前回は仕組みや利用上の注意を中心に紹介しました。今回はNISAに適した運用方法を考えてみます。

NISAは非課税期間中に利益が出ると税金がかからないというメリットを享受できる半面、損失が出た場合には、確定申告で損益通算ができないなどのデメリットがあります。そのため、一般個人向けに運用のアドバイスを行うFP(ファイナンシャルプランナー)など専門家の間でも、「NISAは利益を出してこその制度」という認識が強いようです。

FPが提案するNISAに適した運用方法として目立つのは、例えば以下のような内容です。いずれも、投資の初心者がNISAを利用するケースにも配慮してのものだと思われます。

  • ●利益が出る確率の高い(損失が出る確率の低い)商品を購入する
  • ●投資効率を高めるため、手数料率の低い商品を選ぶ
  • ●価格変動リスクを低減するため、毎月一定額ずつ購入する(積み立て投資)

利益が出やすい運用の具体例としては、国内外の株式や債券に分散投資するバランス型ファンドの購入や、国内債投信も組み入れた保守的な資産配分などが挙げられています。確かにこれらは値動きを小さく抑えて、損失の確率を低くするのに有効かもしれません。

ただし、一方では制度の本来的な特長である非課税のメリットを、利用者である私たちが自ら薄めてしまうことにもなります。利益を出すことにこだわるあまり、運用が縛られたり窮屈になるようでは、それこそ本末転倒というものです。

重要なのは、私たちがNISAの枠組み単体で運用の成否を問うのではなく、保有資産全体の一部としてNISAによる運用を捉えることではないでしょうか。例えばFPのひとり、深野康彦氏の次のような意見が参考になります。

「NISAの口座を開いて初めて投資を行う人の金融資産は預貯金だけのはずなので、NISAでは思い切ってリスクを取ってもいい。NISAでの運用をリスク資産に集中させることで、全体の資産構成としてはむしろ分散効果が出てくるだろう」。

興味のある運用を無理のない金額だけ行う場

もちろん、リスクに対する考え方には個人差があり、そもそも多くのFPがNISAで保守的な運用を薦める背景には、投資の初心者に最初から損失というネガティブな体験をさせたくないという親心もあるはずです。しかし、例えばNISAの年100万円という非課税枠は、すべて使い切る必要があるわけではありません

NISAの枠内でリスクを低減するためにあれこれ悩んだり、最初から投資対象を限定するぐらいなら、自分が興味のある運用を無理のない金額だけ行う場としてNISAがある、という具合に発想を転換した方が、投資体験としての意義も深まるように思われます。

NISAで積み立て投資を行うことについても、その意味をよく考えておく必要があります。積み立て投資では、いわゆる「ドルコスト平均法」によって平均購入単価を引き下げる効果が得られるため、長期的なリスク低減につながるといわれています。

しかしながら、この手法が有効に働くのは、投資対象の価格が上下動しながら最終的に上昇するといったケースに限られます。価格が安定的に上昇するようなケースでは、最初にまとまった金額で一括投資した方が最終的な値上がり益は大きくなるため、非課税のメリットも大きくなります。当然のことながら、NISAの非課税期間中に価格が「積み立て投資にとって理想的な動き方」をするという保証はありません。

積み立て投資の効能は、もっと違う側面から単純に捉えるべきではないでしょうか。私たちが投資を行うためには、当然のことながら投資資金が必要になります。貯蓄と同じく投資の場合でも、日々の生活で残ったお金を投資資金に回すという形よりは、「先に必要額を投資に回してしまい、残ったお金で生活する」という形の方がやりやすく、長続きもしやすいかもしれません。

積み立てによって投資に回すべきお金を目先の支出から先に切り離すことは、初心者が投資という行為のハードルを下げ、投資に慣れていくうえで大きな役割を果たすと考えられます。例えば証券会社などにNISAの口座を開いて投信を積み立てる場合、月々の積立金額は数千円~1万円程度に設定できるので、一度にまとまった金額を投資に回すことが難しい人でも、それほど負担にはならないのではないでしょうか。

ご注意:「いま聞きたいQ&A」は、上記、掲載日時点の内容です。現状に即さない場合がありますが、ご了承ください。

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