1. 先駆者たちの大地

先駆者たちの大地

花王創業者 初代 長瀬富郎

1909~1911年 天祐ハ常ニ道ヲ正シテ待ツベシ

長瀬富郎は、明治44年(1911年)、48才で生涯を閉じた。おりしも、世界最大の石鹸メーカー、英国のリバー・ブラザーズ社が神戸に工場を建設するというニュースが流れた翌年のことであった。

ポスター

明治43年(1910年)頃の花王石鹸のポスター。当代一流の赤坂の名妓を起用した。

明治42年頃から健康に優れなかった富郎は、迫り来る外資の圧力に抗するため、業界の先頭に立って『石鹸、歯磨、化粧品は贅沢品にあらず、実用品なり』と、石鹸への課税、香料や原料の輸入税値上げ阻止に動き回っていた。そうした過労も重なって明治43年には床につくことが多くなった。富郎は遺言書をまとめ、長瀬商店を合資会社長瀬商会に改組することにした。新会社の理念『人ハ幸運ナラザレバ非常ノ立身ハ至難ト知ルベシ、運ハ即チ天祐ナリ、天祐ハ常ニ道ヲ正シテ待ツベシ』を定め、役員、社員が協同一致して、品質、経済に留意して、事業を続けるよう申し渡している。
明治43年の広告は、富郎の消費者への辞世ともいえよう。
『本邦の石鹸界に在りて、其経歴の最も古くして其製法の最も新しく、其品質の最も純良にして其価格の最も低廉なるものは我が花王石鹸なり。品質を本位となし、年と共に改善を加えて常に時世に先駆たる特色を備え、衛生に経済に化粧に其効用を発揮しつつ、社会に貢献す』
富郎の死後、経営は弟の祐三郎、常一に受け継がれた。そして、富郎の三男富雄が二代目富郎を襲名し、無限責任社員に連なった。

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IRマガジン1999年8-9月号 Vol.39 野村インベスター・リレーションズ

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