2006年10月16日
私の父親は私が生まれた後、勤めていた銀行を辞め、地場で証券会社を経営しておりました。第2次世界大戦の始まる前のことです。軍需景気に沸き、証券会社は大きな利益を上げました。その利益で、鉄工所、ホテル、さらには百貨店にまでビジネスを広げたまでは良かったのですが、あまりにも急な成長に事業のインフラが追いつかず、倒産してしまいました。
そのように株式投資の魅力と恐ろしさを身近に感じながら育った私は、堅実な職業に就くつもりで、大学を卒業すると即座に銀行に就職しました。
しかし人生とは皮肉なもので、いつしか自分自身も株式投資の中に巻き込まれて35年余りを過ごすことになりました。私にとって株式投資で成功することは亡き父親に対するリベンジであったのかもしれません(ここで言う株式投資には、株式への投資を行う投資信託への投資も含みます)。
幸いにして、父親が行った株式投資と私の経験した株式投資は、かなり異なった環境と土壌で行われました。戦前の株式市場は短期に相場を張ることが中心でした。それに対し、私が従事した、特に1990年以降の年金資産の株式運用は、長期的観点で資産価値の増大を図るものでした。
このように比較しますと、今と昔で株式投資の基本的性質が変わったように思われるかもしれません。しかし、主要な金融資産の中で、株式がリスクの高いことに変わりはありません。
株価はいろいろな原因で上下しますが、将来の企業利益の予想によって大きく変動します。企業利益は経済のファンダメンタルスや新製品の開発状況などによって変わってきますが、これらの要素は将来のことである以上、正確に予測することは不可能です。予測のぶれが投資でいうリスクですから、株式投資はリスクが高いのです。
現在は、情報の伝達手段やアクセスがIT技術の進歩と共に容易になり、その透明度も高まって参りました。その結果として、株式投資のリスクも以前に比べ小さくなったように思うかもしれません。しかし、株式が債券や他の主要な金融資産に比べてハイリスクハイリターンであることには変わりはありません。ただし、我々は長期投資を前提にして、分散投資により、リスクをコントロールする術を習得してきました。自分がどの程度のリスクであれば取りうるのかを認識すれば、株式投資のリスクも取れるはずです。
最近のゴルフクラブは同じブランドでも初心者向け、女性向け、熟年者向け、上級者向けといろいろな種類が取りそろえられています。株式投資も同じです。投資についての知識と経験の少ない人がいきなり先物やオプションを駆使した投資商品に手を出しても怪我をします。まずは日経平均や東証株価指数といった主要な市場指数を追従するインデックス型の投資信託から始めるのが賢明でしょう。何事もそうであるように、まず自分を知り、自分にあった投資を行うことが、株式投資に向かい合う心得として不可欠です。

自分に合った投資を知ることが大切だね
