2007年11月19日
1990年のバブル崩壊からお国の経済を立て直すため景気刺激策がとられ、国債発行額も増えました。膨大な資金調達を少しでもスムースに行うため、個人の金融資産を狙って2003年3月に発行されたのが個人向け国債です。
デフレのもと、金利が極端に低くなりましたから、国債発行当初は、個人の金融資産は少しでも高い利回りを求めて、個人向け国債に向かいました。加えて当時銀行を中心とする日本の金融機構は大きく揺らぎ、従来は想像もしなかった銀行の破綻が相次ぎ、ペイオフ制度の導入に至りましたから、個人は安全な運用先を求め、一万円から購入できる個人向け国債は魅力的な運用対象となりました。
もちろん、お国が発行する債券だからといっても、絶対に安全とは言い切れません。現に外国政府の発行した債券の中には支払不能となったケースもあります。しかし日本の政府が元本を保証する債券である以上は民間企業・金融機関の発行する債券に較べて支払い不能となるリスクは相対的に低いと言えましょう。
ここでは元本リスクは別として、個人向け国債が皆さんの長期の資産形成にどのような役割を果たし得るのか、個人向け国債のリターンとリスクの実績を資本市場理論の観点から調べてみましょう。
現在はご存知のとおり、個人向け国債には5年満期の固定利付き債と10年満期の変動利付き債がありますが、ここではデータを少しでも長く取れるように2003年3月に最初に発行された10年満期の第1回変動利付き個人向け国債を例にとってみていきたいと思います。
最初に2003年から現在までの期間に債券市場が置かれた状況をみますと、景気の回復に伴い緩やかながら長期金利は上昇を見ました。10年国債の指標銘柄の利回りでみますと、2003年3月末に0.70%だった利回りは2007年9月末に1.675%まで緩やかながら上昇しました。すでにこのコラムでも何度か述べたように、一般に債券の利回りが上昇すると債券価格は下落します。事実、この間54ヶ月の国内債券の代表的な総合投資収益率指数で見ますと、年率0.38%と低い結果が出て参ります。これは緩やかながら金利が上昇した結果長期債を中心にして債券価格の低下による評価損が出た結果だとみられます。
これに対して上記の第1回個人向け国債の当該期間の利払いをベースにした総合投資収益率(リターン)を計算しますと0.63%となります。個人向け国債は元本変動リスクがありませんから、この間のリスク(標準偏差)を計算しますと、国内債の総合投資収益率指数の年率2.16%に対して年率0.45%となりリスクとの兼ね合いで見ますと個人向け国債の優位性はさらに高まります。
国内債の総合投資収益率指数算出に含まれる債券の平均残存期間が7年弱であり両者を単純に比較する事はできません。上記のとおり当該期間は緩やかながら金利の上昇局面のみを含みます。仮に金利低下局面ではどうなるでしょうか?恐らくリターンは国内債の総合投資収益率指数の方が高くなるでしょう。
結論的に言えば、上記の54ヶ月のデータだけで個人向け国債の優位性を証明することはできません。恐らくリスクはいずれにしても個人向け国債の方が低いと思われますから、貴方がご自分の長期投資ポートフォリオの中で国内債券について安全性をより重視されるならば個人向け国債を含めるべきでしょう。しかし貴方のリスク許容度が許すのであれば様々な債券を含んだ国内債ファンドに投資すべきかもしれません。
前々回の「リターン」、前回の「リターンとリスク」のコラムでお話した投資に関するデータの使い方をご理解いただくために、個人向け国債を例にとりながら説明しました。ポートフォリオの中での一つの商品として個人向け国債を考える場合、さらに関連した他の要素も見ていく必要があります。
次回をお楽しみに!
(少しむずかしかったかな? 上記にあげた数字はあくまでも参考です。筋道を理解するために使いましょう。)

自分の「リスク許容度」をしっかり決めて商品を選ぶことが大事なんだね
