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ベータとアルファ

2007年4月27日

最近文庫本ブームに乗って数多くの時代小説が出版されるようになりました。手軽に面白い時代小説が読めるのは読者にとっても大変にうれしいことです。ただし一口に時代小説といわれる中にいくつかのパターンがあるように思われます。

いろいろな類型化が出来るとは思いますが、一つのパターンは戦国時代と徳川時代の政治的な流れを中心にしたものでしょう。織田信長や徳川家康、さらにはその陰で彼らを支えた知将達の動きを描いたものです。ここでは当時の政治や社会の流れが小説の支えとなっていますから、ダイナミックな展開が作品の面白さを支える大きな要素となっています。往々にして架空の作り話も織り交ぜることによって単なる歴史描写以上に読者を惹きつけていきます。

もう一つのパターンはある特定の社会背景の下で、その社会の底辺でうごめく人間像と人間関係を緻密に描き出していくものです。当然、時代の大きな流れは所与のものとして、登場する人物の細かな人情や欲望の動きがストーリーの中心となります。具体的に作品をあげるならば平岩弓枝の「御宿かわせみ」や澤田ふじ子の「公事宿事件書留帳」などがこれにあたります。NHKの木曜時代劇シリーズで放映されていますから、内容は皆さんもご存知と思います。ちなみに最初のパターンのいくつかは同じNHK番組の大河シリーズで取り上げられています。両者を対比してみると同じ時代劇(小説)といってもモチーフの違いが浮かび上がるでしょう。

さて、文芸的なお話はこれくらいにして投資のお話をいたしましょう。長期投資を考える時、だれしも市場平均を上回る投資収益率をあげたいと考えます。個別の株価は多くの場合、市場全体の動きと無関係ではありえません。日本経済の成長に合わせて個別の企業の収益も変動します。しかしその増益率は必ずしも同一ではありません。ある特定の業種や企業は景気の動きに、より敏感に反応します。従って、株価も市場平均値を上回る上昇をします。この市場の平均株価の増減率に対する感応度が「ベータ」です。たとえば、素材産業や企業は景気回復の局面で業績が大きく改善されますが株価の上昇率も大きくなり、逆に景気の下降局面では業績の落ち込みも大きくなる傾向があります。それに対して、景気のいかんにかかわらず業績の比較的安定している薬品株や日用消費財株は株価の動きも限られています。前者のベータが1を上回るのに対して後者のベータは1を下回ることになります。

一方、企業の中にはバイオテクノロジーや高度の電子テクノロジーを駆使し、他社にはないすぐれた製品を開発する企業があります。このような企業の株価は、市場全体の動きとは離れた動きをすることがあります。このようにして得られる市場平均を上回る投資収益率を「アルファ」と呼びます。皆さんの中にも、たまたま保有していた薬品株が新薬開発のニュースにより株価が暴騰し大きな利益を上げられた幸運に恵まれた方がいらっしゃるかもしれません。しかし内部情報に対する規制が厳しくなり、かつ市場の効率化が進むとこのチャンスに巡り逢うことも大変に難しくなります。また、皆さんが十分に分散化したポートフォリオをつくられますと、理論的にもアルファは0に近づきます。この点では景気の波動を予測しながら戦略的に業種構成を変えることによりベータに基づく超過リターンを上げることは出来るかも知れません。しかし景気波動の周期も技術革新や戦争と言った予期せざる出来事で撹乱されます。結局は長期の資産形成投資を成功させるには十分に分散されたポートフォリオを組んでアルファを0としベータを1に近づけておくことが大切なのでしょう。

歴史の流れの中で、ダイミックなシナリオ展開を図り高いベータを創造したり、細かな人情の綾を描き出すことによって読者の心情に食い入り、時代を超えたプラスのアルファをかもし出す時代小説の世界と異なり、長期の資産形成を目指す投資運用の世界では、経済の成長を確信して、分散投資で二種類のリスクを十分にコントロールすることが重要になります。

分散投資で二種類のリスクをコントロールするのね

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